Ricola

昼顔のRicolaのレビュー・感想・評価

昼顔(1967年製作の映画)
3.7
「昼顔」…その名を与えられた彼女は昼の顔と夜の顔が違う。
欲に溺れていく美しい既婚女性をカトリーヌ・ドヌーヴが演じているが、艷やかな色気の中に気高さが失われない女性を好演している。

やはりこの作品においても、ルイス・ブニュエル監督のフェティシズムが堂々と表現されていることは否めない。


昼顔の妄想や回想が、フラッシュバックするように並列に挿入される。
特に幼少期の彼女のトラウマのような過去が、否応なしに入ってきてそのたびに彼女をはっとさせる。

また彼女の高級ファッションが素敵。
どの衣装もフランス人形みたいな容姿のドヌーヴにぴったりだった。

ピエールとアンリが牧場のような場所で火を炊いてスープを飲む場面が、一見唐突的に見えるが実はそんなことないのだと思う。
彼らがスープを「生ぬるいな」と言うのは、アナイスの館で客たちがシャンパンを開けるときにもそう言うのと同じである。そこの反復が皮肉的になされているということだろう。
またそこで牧場にいる牛の群れをみて、「後悔」という名の牛たちだけど、一匹だけ「贖罪」であるというのは、聖書の迷子の子羊の例を思い出す。

馬車に乗って…まるでおとぎ話のようである。
女子なら特に憧れることで、昼顔も例外ではない。
というのも、馬車というモチーフが、彼女の夢や幻想へと導いてくれるのだ。
それは冒頭とラストからよくわかる。

昼顔という女性の密かな欲望と男たちが欲望の交わりは、思ったより生々しく描かれてはいないが、それぞれの性的なフェティシズムがわりと細かく描かれているのは、さすがブニュエル監督のこだわりであろう。

本能というのは理想の現実をおくるにはやはり厄介なもので、昼顔の憂いと強気な表情が絶妙にそれを表現していた。
Ricola

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