爆裂BOX

エネミー・マインの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

エネミー・マイン(2011年製作の映画)
4.3
1995年、終戦間もないボスニアで地雷撤去作業を行うツェレ中尉の小隊が廃工場の地下に閉じ込められている男を発見。ダバと名乗るその男を保護した後から不可解な事態が起き初め…というストーリー。
「エネミー・ライン」風のタイトルに「ハート・ロッカー」風のジャケットとパチモン感漂ってますが、中々どうして侮れない作品でしたよ。
終戦後、両軍が埋めた地雷の撤去作業を行う小隊が主役ですが、その撤去作業がリアルに描かれます。地雷を踏んでしまったヒロインの救出シーンは中々面白いですね。本当にあんな方法使うのかな?
ダバと名乗る男を保護してからは徐々にホラー映画の様な雰囲気になっていきます。仲間が突然消えたり、撤去した地雷が再び埋め直されていたり、突然銃撃を受けたりと不可解な状況が続き、やがて徐々に精神を蝕まれた隊員たちは争い殺し合いを始めていきます。隔絶された状況下で疑心暗鬼に陥る隊員たちのドラマや、一人が離れに立て籠もったり、手榴弾で皆を脅して従わせようとする展開は「遊星からの物体X」を彷彿させます。
本作の物体Xと呼べるダバは敵兵からは「魔王」や「悪魔」「神」と呼ばれますが、見た目は所領の普通のオッサンで話しかけるだけで特に何をするでもなく、正体も最後まで明らかになりません。それでも、超然とした不気味な雰囲気を感じさせるのが凄いですね。本当に彼が悪魔なのか、それとも偶然が重なっっただけなのに戦争で精神を蝕まれた兵士達が勝手に悪いほうに考えて自滅していったのかも明らかにはなりません。
ダバは人間誰しもがもつネガティブな感情のメタファーでそれが極限状況で狂気へと変わり、その果てに戦争行為があると言いたいのではないでしょうか。ラストで主人公がとる行動と絶望的な雰囲気が印象に残ります。
ジリジリとした緊張感と絶望感に包まれた戦争映画の良作だと思います。