キッチー

リアリティのダンスのキッチーのレビュー・感想・評価

リアリティのダンス(2013年製作の映画)
4.0
『エンドレス・ポエトリー』の前段にあたる映画。ラストシーンでエンドレス~に繋がります。
こちらもホドロフスキー監督の自叙伝ですが、アレハンドロは幼く、父親ハイメと母親サラを中心としたシーケンスも続いていきます。

特にロシア系ユダヤ人でチリに移民してきているため何かと差別される共産主義者のハイメが、人道主義者なところ、そして体制への不満や葛藤を抱える人間くさいところも表現されていたり。家族から離れた彼が指導者の暗殺に失敗し、家族と再会するまでの苛酷な状況も描かれています。

母親サラについては、オペラ歌手になりたかったという彼女の願いをこの作品で実現。そして、彼女が様々な奇跡も起こしていきます。

今作も監督の心の中にあるものをリアルに表出した感じの作品。グロい表現や性的表現、無修正の部分もありますが、作り物感があまりしなくて、リアルに心に迫ってきます。そして全編にわたって色彩感覚豊かな映像、含蓄のある台詞が散らばっています。
とは言え、ぶっ飛んだ内容なのは間違いなく、驚きの連続でしたが。
※過激な表現があり公開時はR-15だったようです。

ハイメとアレハンドロの親子関係については、父親の息子を強くしたいという願望が出ていて、なかなかいいのですが、そのやり方が、旗からみていて、アレハンドロに気の毒な感じでした。でも、強い父親に優しい母親、裕福な家庭、この時代としては、いい少年時代だったかもしれませんね。

この映画は幼いアレハンドロに寄り添えように登場すら監督本人の他にも、アレハンドロの子供達が俳優や音楽で参加していて、今作とエンドレス~を合わせて、監督の集大成のような作品です。でも、まだまだ気力は衰えるような感じはなく(ほぼ90ですが)、次回作も制作中とか。
次はどんな作品で驚かせてくれるのか、楽しみです。

あっ、その前に観ていない作品もチェックしなくては...(笑)
キッチー

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