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淪落の女の日記のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

淪落の女の日記(1929年製作の映画)
3.5
[あなたは他人を愛せるか、私とルルの時代(後編)] 70点

「パンドラの箱」以降、取り憑かれたようにルルの影を追い求めた私が同じくパープストが監督した本作品を見つけるのに時間はかからなかった。正直に言ってしまえば、本作品にブルックス以外の価値は薄いように思えるが、ブルックスの価値が歴史的にも私の中でも非常に大きいものだから、そこまで好きになれないけど必ず手に入れるべき作品の一つなのだろうと思っている。想い出記録。

内容は「パンドラの箱」よりも現実味の濃い社会的な映画になっている。他人との繋がりが希薄になった現代社会では、キリスト教的な偽善(娼婦や未婚出産)は旧時代的な倫理の押しつけに過ぎないという話なのだが、特段興味を引く話でもない。やはり、ブルックスであること以外に価値が見出せない。ちなみに、日記要素は薄いらしい(当時の記録より)。

「パンドラの箱」以後、アメリカに戻ったブルックスはパラマウントの仕事を断ったせいでハリウッドから完全に閉め出されてしまう。ルネ・クレールに呼ばれてパリに行くものの企画は頓挫し、そのままパープストに呼ばれて本作品に主演した。再びアメリカに戻るも、先のルネ・クレールの企画が動き始めたためパリに行き、撮影した。これが「ミス・ヨーロッパ」である。パープストはブルックスにヨーロッパに留まってほしいと思っていたようだし、ブルックスのことを深く理解していた唯一の人間かもしれないが、彼の心配もよそにアメリカに戻ってしまう。しかし既に居場所などなく、小さな映画に出演しただけで女優としてのブルックスは表舞台から永遠に消えてしまった…

こうして、私とルルの時代は終わった。結局ルイーズ・ブルックス=ルルとは何者だったのか。彼女が残した莫大な遺産を抱えて、私は今日も考え続けている。
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