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ゲームの規則のKuutaのレビュー・感想・評価

ゲームの規則(1939年製作の映画)
4.3
空間を生かして人物を交錯させ、話を広げている。割と普通な貴族風刺のように思えるものの、映像でそれを語っている。楽しい。

冒頭の飛行機の勢いと人の渦、野原を走る動物を撃ち殺すシーンの生々しさが見事だが、貴族と召使いの生活では、彼らは同じ家に暮らしながら「身分という導線」で線引きされ、目線を合わせない。自由に動いているようでいて、自動演奏のオルガンのように全てが演出されている。その残酷な現実を、ディープフォーカスの撮影が浮かび上がらせている。
(妻が給仕を初めて直視する場面の印象的なクローズアップ。愛人と夫は人形を横に置いて喋る)

ところが、仮装シーンで白と黒がひっくり返って、一階と二階、部屋から部屋へ、みんな好き放題し始める。ルノワール自身が演じる男、オクターブが熊の仮装が脱げない、脱がしてくれと屋敷内をうろつく事で、いろんな話が画面奥で同時進行していく。「スクリーンに舞台裏はない」というバザンの言葉を連想した。

・ワンショットで人物がフレームイン/アウトを繰り返し、当人の意見はコロコロとひっくり返る。ただ、身分制度だけは、自壊する運命なのは明らかだが、無意識に守っている。「大西洋を越えた」パイロットと、彼に恋する娘はそれを掻き乱そうとするが…。ラストで橋を渡り、登場人物が森から屋敷に入っていく場面が印象的。身分を超越した混沌から、結局彼らは規則に取り込まれていく。

・序盤のパイロットとオクターブの口論。下から見上げるショットで、真っ白な空を背景に据えている。貴族の世界(部屋割り)から解放された自由な会話?

・白い服の妻と黒い服の愛人は鏡像関係にある。和解する場面、フレームアウトする愛人を妻が追う。カメラは切り返しではなく、パンするので関係が途切れない。ベッドの枠で2人は一旦分離するが、妻の側から境界を越えていく。85点。
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