まるごと一本映画の教科書を読んだかのような、オーセンティックな作品だ。
しっちゃかめっちゃかのてんやわんやな印象を与えるのは、ストーリーによる部分もありながら、ディープフォーカスのロングショットを用いた膨大な情報供給による部分もあるのだろう。手前で話している後ろで追いかけっこが起きているなど、少なくないショットではふたつ以上のことが語られていた気がする。何度かあったが、来客を出迎え、握手し、キスとハグを交わすごちゃごちゃしたやり取りは、この映画の構成を要約している。
狩りのシーンはかなり力が入っていたし、劇のシーンもよかった。どう考えてもキッチュすぎる自動演奏人形のアップショットから左にパンして、人物と重ね合わせるのは、皮肉が露骨すぎて笑える。