ショウキ

オスロ、8月31日のショウキのレビュー・感想・評価

オスロ、8月31日(2011年製作の映画)
4.6
2021年269作目(再視聴)

あなたの目の前を通り過ぎる世界。

テルマの監督の2作目。
英語字幕でしか観たことがなかった本作。
今回JAIHOで観ることが出来たので、
レビューしたいと思います。

本作は人生、幸せ、更生などのテーマを
正直で内省的な物語と主役の演技で
掘り下げた思慮深い素晴らしいドラマです。

個人的に余計なシーンはほぼ無くて、
胸にスッと溶け込んでいくように
ストーリーが展開していき、
主人公のことを知っていけます。

そして同時に主人公が
世界をどのように見ているのか、
なぜ「もう後戻りも前進も出来ない」と
感じているのかを理解させられます。

自分自身がどんな人間であろうと、
どんな問題を抱えていようと、
この世界は知らぬ顔で自分の目の前を
通り過ぎていくのです。


ここからはネタバレ含め書きます。


主人公のアンダース(34)は麻薬中毒。
物語は就職面接のために
リハビリセンターから休暇をもらい、
街に繰り出すところから始まります。

まずアンダースは旧友に会いに行きます。
旧友は妻子持ちの教授です。
二人はジョークから真面目な話まで、
長時間熱心に話をしますが、
これが繊細で切なくて惹き込まれます。
旧友がいくらアンダースのことを
大切に思っていたとしても、
二人が元の旧友の関係に戻る未来は
ないと分かってとても切ないです。

次の面接のシーンも切ない。
アンダースはまるで採用されることを
恐れているかのような様子でした。
この気鬱な様子はとてもリアルで、
憂鬱さが麻薬中毒へ引き摺り込んだのか、
逆に麻薬中毒が引き摺り込んだのかと、
考えさせられました。

オープニングのナレーションで
アンダースがそこそこ良い家出身と
分かっているので尚更心に響きます。

一刻も早くそんなアンダースの状況が、
好転してほしいと思っていましたが、
監督は悉く希望を打ち砕いていきます。
絶望への一途を辿るアンダースを、
観ている側は夜通し追いかけますが、
辿り着いた先にはまたしても
悲しい結末が待っています。

最後にアンダースはピアノを弾きます。
これが結構上手で観ている側はもしや
音楽がアンダースを変えるのではと
一縷の望みを抱きますが、
難しい一節に入ってつまずくと
弾くのを止めてしまいます。

そして…
ショウキ

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