chunkymonkey

オスロ、8月31日のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

オスロ、8月31日(2011年製作の映画)
4.0
来月公開の「わたしは最悪。」(5.0でレビューつけています)はヨアヒム・トリアー監督のオスロ3部作最終章。本作はその2作目に当たります。テーマなど共通点は多いですが独立したストーリーですので予習はしなくて大丈夫。ていうかフィルマの「わたしは最悪。」はあらすじ書き過ぎ。ほぼ2/3は網羅してる...

世の中随分と豊かになり自由に人生の夢を描くことが許される現代社会。SNSはキラキラな人生で溢れ、理想をいくらでも高く掲げられるからこそ、その思い描いた通りに人生を送っている人などいないだろう。それはもちろん環境や運などにも左右される一方で、自由な自分の選択という側面も当然ある。不完全な人生を選択した自分を許すことが現代人にとってどれほど大切でどれほど難しいかが、薬物依存を克服した直後の一人の青年を通して描かれます。

これほどまでに客観性と共感性を両立させた映画はないのではないでしょうか?上の世代の方からみれば単なる贅沢病なのかもしれませんが、そう放置してはならないほど彼らの悩みがいかに深刻なものなのかまざまざと見せつけられ、本当に痛ましい作品です。

ほぼ同様のテーマで全く同じ質感の痛ましさが「わたしは最悪。」でも描かれるものの、「わたしは最悪。」ではその痛ましさがカラッと洗練されたコメディテイストと絶妙なバランスで絡められ若者を中心に絶大な支持を得た一方、本作はただただ痛ましくて鑑賞中はつらかったです...

もちろん、主人公の設定そのままに薬物依存の映画と捉えても全く違和感はなく、こういったところの脚本力はさすがです。

個人的には主人公と比較的年齢も近く、私も思い描いた人生とは程遠い残念な感じなのでかなり沁みた。周りが何と言おうが自分を許してあげられるのは自分しかいない。「理想の人生ではないけれどそれでもいいんだよ」とそっと心の中で自分につぶやきました。つらかったけど観てよかったです。が、気分が落ち込んでるときには観ない方がよいですよと警告しておきます!
chunkymonkey

chunkymonkey