TOT

オスロ、8月31日のTOTのレビュー・感想・評価

オスロ、8月31日(2011年製作の映画)
4.7
34歳、薬物依存、職もない、かつての恋人とは連絡が取れず、友は家庭を築いている。
目に映る人々、耳に入る会話から取り残されていく感覚。
ノルウェーの首都オスロで過去に囚われ、9月1日に進めない男の孤独に深い悲しみと温かい視線を注ぎ、卓越した映像感覚で描出するヨアキム・トリアー。
世界で一番幸せな国と言われながら同時に、欧州において薬物の過剰摂取による死亡率が最も高い国の一つでもあるノルウェー。
首都オスロの淡く優しい色合いの街並みに潜む暗部、薬物の誘惑が、じわじわと主人公を取り囲む。
教養も仕事もあり、普通に生きていたように見える男が、闇に追いつかれてしまう。
生きたい?消えたい?希望と絶望を行き来する主人公アンデルシュ・ダニエルセン・リーが微妙な表情の変化、機微を見せて素晴らしい。本当にいい俳優。
あと、ヨアキム・トリアーは本当に絵作りがうまい。窓辺、友との別れ際、夜の広場、自転車、寝室にゆっくり近づくカメラ。思い出すだけで泣きたくなる。
すごい。すごいぞヨアキム・トリアー。
『テルマ』楽しみです。
TOT

TOT