マヒロ

私の、息子のマヒロのレビュー・感想・評価

私の、息子(2013年製作の映画)
2.0
セレブの初老女性・コルネリアは、息子のバルブが恋人と暮らし始めてからすっかり家に寄り付かなくなったことに不満を抱いていた。そんなある日、コルネリアの元にバルブが運転中に子供を轢いてしまったという連絡が入る……というお話。

事故を起こした息子を守ろうとする母という構図になっていくところはポン・ジュノの『母なる証明』を思い起こさせられるけど、泥臭く奔走するようなあちらと違い、こちらの母はとりあえず金で解決しようとしたり息子に嘘の供述をするよう迫ったりと、何とか根回しして事件をもみ消そうとするなんともリアルで嫌らしい感じ。どちらが良し悪しということはないが、とりあえず現実主義的なところは何となくヨーロッパらしいところな気もする。

息子のバルブは過保護な母をどこか疎ましく思っているんだけど、その一方でもう30代くらいなのにその庇護から逃れることを恐れているところもあり、母のやり方を非難しつつも肝心なところでは自分から踏み出せないなんとも情けない男。恋人との間に子供を作ることも異常に嫌がっており、自分が大人になることを拒否しているかのように見える。母の教育の賜物なのかそういう性格だから母が過保護になったのかは分からないが、いつまでも責任のない子供でいたいというバルブの考えが原題である『Poziția copilului(=胎児の位置、体勢)』に繋がってきて、いつまでもお腹の中にいる赤ん坊みたいに共依存に陥っている母子が一つの事故によってどう変わっていくか……というところを描いている。

正直なところ映画として面白いかと言われるとそんなでもなくて、母子の関係性の変化を表すラストはオッとなったが、全体的にはやや退屈気味。母コルネリアと息子の恋人カルメンが対話する場面など、部分部分では良いなと思うところはあったけど。

関係ないが、劇中で流れるルーマニアの曲?がものすごい80年代の日本のポップスみたいな感じで、映画のトーンと妙にギャップがあって面白かった。異国のポップ音楽ってなんかどの国も聴くと不思議な感じになるのはなんでなんだろう。

(2020.84)
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