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南京!南京!のkazataのレビュー・感想・評価

南京!南京!(2009年製作の映画)
4.0
戦時下の国策記録映画『南京』を見た後で、日本未公開(イベントで1回だけ上映されたらしい…)の本作がしれっと配信されているのを見つけたからすかさずウォッチ!
(事前に記録映画『南京』を見ておくのをオススメです!引用シーンが多々あるように思えるから、たぶん本作の製作過程でも参照してるはず?)

以前『スパイの妻』鑑賞時にもつらつらと思い出話を書いてしまいましたが、個人的に"南京虐殺"映画にトラウマ級の記憶があるので……本作にはそれに近い雰囲気を感じることができました!
(「そうそう、こんな感じの描写があった…」的な懐かしさと、思わず目を背けたくなるような鬼畜な所業描写の数々ね…)
(本作を小1の頃に中国籍の友達と一緒に見たとしたら、確かにあの頃と同じくズーンってなっちゃうわ…)

「どーせ中国人目線のゴリゴリな反日映画でしょ」と思いきやそんなことはなく、日本兵の蛮行や残虐さを描くことよりも「彼らがなぜそういう風になってしまったか?」を日本兵視点で検証しようとする姿勢が貫かれているので、(38歳の若さで本作を撮った)ルー・チューアン監督のことは全力で擁護したくなりますね。
(中国国内でも本作が日本人視点で描かれていることに賛否両論巻き起こったらしい…)
(傑作映画『地獄の黙示録』のウィラード大尉っぽい感じかな…)
(先日見た映画『八佰』もそうだったけど、そもそも当時の国民党と現在の共産党で立場も異なるから、過去を描く際には中国の複雑な国内事情もあるようで…)
(今なお検閲があって表現の自由が窮屈そうな中国よりも、本作を国内で一般公開することができない日本って…)

「南京虐殺なんて無かった論」の人には本作の存在自体が許せないのかもしれないけど、、、(程度の問題や誇張表現は当然あるにしても…)そもそも戦争時の非人道的な振る舞いなんて古今東西どこにでもあるわけで(その手の話なんて世界中にごまんとあるし!)、日本だけが例外的にやっていないなんてことは無いと思うんだけど。
(常識的に考えて、何度も死線をくぐり抜けた末にたどり着いた南京での日本兵のメンタルって相当ヤバイ状態でしょ…)
(日本人だから残虐非道なわけじゃなく、どの国の人だろうが精神的に極限状態に陥れば同じような行動を取ってしまう可能性がある…ってことは歴史を見れば明らかだし)
(本作でもちゃんと描かれているけど、日本兵個人の責任というよりも、精神的に極限状態の集団をきちんとコントロールできなかったシステムの問題も多分にあるはず……この辺はホロコーストにも通じる視点かも)
(「そんな事実は無かった」って開き直るより、「どうしたらそんな事態にならないで済むか」を検証した方が将来のためによくない?)
(そりゃ現在の中国国内の人権問題にだって色々と言いたいことはあるけどさ……過去の自国の過ちを潔く認めなきゃ文句も言えなくない!?)

クライマックスで繰り広げられる日本的な鎮魂祭シーンも記録映画『南京』を思い起こせるし、ヒューマニズム溢れる映画の締め方には、日本が誇る反戦映画監督の"亀井文夫イズム"を感じることができました!
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