【 葛藤する〝ふたり〟 シリーズ最高のラブストーリー 】
「…君を失うことはできない」
「だから私と一緒にはいられないって言うの?」
映画の序盤、主人公ピーター・パーカーとヒロイン グウェンの会話。
グウェンの家族による高校卒業祝いのディナー。招待されたピーターがレストランに入るのを躊躇していると、グウェンが店から出て来ます。
自分といれば、グウェンに危険が降りかかるかもしれない。
愛するがゆえに一緒にいることができない。
この問いは、ある意味、究極。
「僕は君と一緒にいることはできない。君のお父さんと約束したんだ」
「そのことは話し合ったのに。……同じことの繰り返しね。……私たち、別れましょう」
以下、前作(アメスパ1)についてのネタバレがあります。
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前作の終盤で警官であるグウェンの父親は、敵との闘いで命を落とし、その死に際にピーター=スパイダーマンに「君といるとグウェンが危険だ。二度と娘に近づくな。いいな」と言い残します。
そこでこのレビュー冒頭の会話。ピーターは「約束したから」って言うけど、父親に言われるまでもなく、そのことはピーターが一番よくわかっている。
サム・ライム版の3部作はもちろん好きです。「シンプル・プラン」のレビューにも書いたんですが、この監督はやっぱりうまい。ケレン味がないというのか、どんな場面でも人物の心情にビタッとあった演出をしてくる。
一方で、このマーク・ウェブ版「アメイジング・スパイダーマン」2部作。状況設定のうえで効果的なのは、第1作の中盤には、早々にヒロインが「自分の恋人はスパイダーマンである」という事実を知る点。
第1作。グウェンの自宅バルコニー。どうしても自分の秘密を打ち明けることが出来ず悩むピーター。彼女の父親がスパイダーマンを敵対視しているから、真実を告げれば彼女を苦しめることが目に見えているのだ。そんなに自分が信頼できないのかと苛立って離れようとするグウェン。
こらえきれず、糸をぴゅっと出してグウェンを引き寄せて、抱きしめる。驚きを隠せないグウェン。キス。
オッサンをもトキめかせるシーンでした。
サム・ライミ版のピーターは、恋人MJに自分の素性を隠しているがために誤解も生じて〝ひとり〟で苦悩し、葛藤していました。
対して、こちらは秘密を明かしたために〝ふたり〟で葛藤している。〝ふたり〟の問題として向き合っている。
ピーターはグウェンを危険に晒したくない。グウェンはそれでも一緒にいたい。
自分たちは一緒にいることで幸せになれるのか。お互いにとって何が本当に幸せなのか。ピーターの使命感とグウェンの夢と、お互いへの愛情と。
そして悩んだ果てに二人が出した結論は…。
これ、かなり大人の恋愛映画ですよ。二人の感情を丁寧に描いて噓がないので、葛藤が観る側に切実に伝わってくる。シリーズ最高のラブストーリーだと思います。
さすが「(500)日のサマー」のマーク・ウェブ監督の本領発揮!
「スパイダーマン版 追憶(Rレッドフォード&Bストライザンド)」と言ったら言い過ぎか。(言い過ぎだな、さすがに。)
で、ふと思う。
特にラブストーリーが好きなわけではないのに「アメスパ2」に心惹かれ、「スーパーマン」でもヒロインとの夜空の飛行デートに心惹かれる。
僕はスーパーヒーローの恋愛模様にしかトキめかない特異体質なのかもしれません。