KANA

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのKANAのレビュー・感想・評価

3.8

アケルマン作品3本目の鑑賞。

噂通り、抑揚の無さが半端じゃなかった!
ドラマを作る時に普通は省かれるような、どうでもいい日常のルーティーンや所作を固定カメラで延々と、淡々と映す。

展開の面白さも俳優の演技も一切期待せず割り切ったらこれはこれで見入る。
『アンナの出会い』のレビューで「飼育ケースの中の昆虫を観察してるみたい」と書いたけど、本作こそまさに。
とはいえ物理的にも大きな動きがなさすぎてついウトウトしてしまいがちだったのも確か。笑
でもそれはつまらないからではなく"1/fのゆらぎ"的な心地よさからのような気がする。
ジャンヌのミニマルで丁寧な暮らしに、響き渡る生活音が程よいASMRで。

誰にでも聖域ってあると思う。
絶対やらないと気持ち悪いルーティーンや、落ち着ける時空間など。
聖域にいる間は"無"でいられるし内観できる。修行僧が無心で掃除をするように。
テトリスみたいに過不足なくテキパキ雑用をこなすジャンヌを眺めながら、そんな事を考えていた。

でその聖域が少しでも侵されるとやっぱりストレス。
これはなにも主婦の立場に限ったことではないと思う。
誰もがこういうフレームの中で生きている。
どこまでも自分軸っていうのは社会が許さないわけで、その時々の事象と波長が合わない時だってある。
ふと『名もなき詩』の
「知らぬ間に築いていた自分らしさの檻の中で もかいてるなら 僕だってそうなんだ」
の歌詞を思い浮かべた。
彼女にとって檻の中が結局すべてだったのかな。
味気ない固定カメラが捉えるように、自分を俯瞰で見れてたら終盤の突発的な行動までには至らなかったかもしれない…。

一点を見つめて微動だにしないカットもいくつかあり、それこそ内観だと思うのだけど画としてはかな〜りシュールw
ここまで媚びない演出はなかなかない。
粋なメタファーや伏線の1つでも映り込ませたくなるものだと思うんだけど、貫いてる!潔い。

この作品の意義は分かる(気がする)。
ただ映画として特別好みがどうかは微妙かなぁ。
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