Yoshishun

水のないプールのYoshishunのレビュー・感想・評価

水のないプール(1982年製作の映画)
3.6
内田裕也主演、80年代に実際に起きたクロロホルムを使用した連続性暴行事件から着想を得た人間ドラマ。
決して犯人を追った実録ドラマではなく、着想を得たというのがポイントである。

本作における内田裕也演じる主人公は、駅員の仕事を淡々とこなすしがない社会人となっており、ある日不良少年にレイプされかけていた女性(元ピンク・レディー!)を助けたことから運命の歯車が動き出す。お風呂上がりの娘の全裸、息子の標本づくりに用いるクロロホルムがトリガーとなり、退屈な日常はいつしか彼にしか味わえない刺激に満ちた日々へと変貌していく。性犯罪の模様を赤裸々に映し出しており、また前述の幼女の裸もモザイク無しに映すというタブーを犯しているため、あまりにセンセーショナルな描写の連続に脳は飽和状態になりかける。

元々、内田裕也自身がプールサイドでコンサートをしていたのに、周囲はプールに夢中になっていた経験を機にタイトルが考案されたように、退屈な自分を見てくれというような承認欲求から本作のような非人道的な行為に走ってしまったのかと勘繰ってしまう。あの時、水のないプールで誘惑してきた美女と戯れていれば犯罪に手を染めなかったのではないか。しかし、彼自身は行為自体に後悔はしていないし、あのラストシーンからしてもむしろ開き直っているようにも見える。彼にレイプされた内の1人でさえも、徐々に彼の行為の虜になっていくことから、退屈な日常からの脱却の危うさを物語る。

前回の『マニアック・ドライバー』と同じく、エロ要素をやや長ったらしく映すので飽きが来やすいのだが、現代では作れない攻めに攻めた怪作といったところだろうか。
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