backpacker

ケシ畑の小さな秘密のbackpackerのレビュー・感想・評価

ケシ畑の小さな秘密(2012年製作の映画)
4.5
「豚とママたちの血が混ざっていました」
内戦の続くコロンビアにて、少年シモンの視点から、麻薬カルテルの精製工場と町の人々、淡い恋心と無慈悲な死の世界を描きます。

私はこういう映画がわりと好きでして、見ていたら『ビヘイビア』を再鑑賞したくなりました。

印象的なシーンはかなりあります。
①ボスとシモンの会話では、カットバック+段階的な顔へのクロースアップというティピカルな撮影をしています。そんな撮影だからこそ、頭に残りやすいです。

②町がゲリラに襲われたとき、精製工場の小屋で待つシモンと、彼が恋している少女ルイーサのクロスカッティングです。
シモンのシーンでは、鏡の上でビー玉を転がし、映りこむ彼の顔を見せます。
そして、ビー玉のクロースアップとスローモーション撮影も交えます。
ルイーサのシーンでもクロースアップとスローモーション撮影を用い、場に漂う不吉なムードと緊迫感がグイグイと感じられます。

③地雷原の疾走シーン。
必死に走るシモンの顔と、疾走する脚の交互な撮影。彼の切羽詰まった感じがとてもわかりやすいです。

④シモンとルイーサと、エメラルドグリーンの湖
ルイーサが地雷原の先にある湖に案内してくれたのですが、このシーンはラストに配置されています。
ここでの2人はとても幸せそうで、美しい風景も相まってそれまでの陰鬱な雰囲気を忘れさせてくれます。
それでも、この湖は過去のこと。この後彼等の前には、避けられない無情な現実が立ちはだかります。


この寂しい街とコロンビアの辛い現実。
友情と恋心の裏側では、内戦と麻薬のシビアな世界。
「死んだらどうなるの?」というシモンの問いに、父は「天国へいくのさ」と答えます。
その後、シモンはルイーサの死に思いを馳せ涙します。
死は冷厳な現実。泣くシモンの姿が、とても虚しいです。

シモンと父がバスにのり旅立ちます。さながら、冒頭に戻ったかのようです。彼等の旅が終わることなく、コロンビア内戦の悲しみも延々脈々と続いていくように思わされました。
backpacker

backpacker