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大統領の料理人のLUXHのレビュー・感想・評価

大統領の料理人(2012年製作の映画)
3.2
なんだか愛らしい映画だった。監督(兼共同脚本)は料理好きとのこと。14年任期を全うした大統領も料理好きで7年目以降虚飾に満ちた食事の席に辟易して料理学校創設者の彼女をプライベート料理人として招致する。

年間3000食の官邸を支える24人のシェフ、画的に多分もっと動かしている…と思う。凄い多かった気がする。初めての女性シェフ、しかも年間150食のために独房とアシスタント付、そして30年在籍する形式とプライドにまみれる料理長が快く思わないのはまあ解る話で。そんなに誰が悪か?真実か?を絞る映画ではない。(後半には直接的な嫌がらせの描写は見られない)

大統領が目を輝かせ、昔ながらの料理の話をする。ここでは少年のような無垢な純粋さが滲み出ている。彼女が彼に応えようと古い古いレシピ文献を(多分)捜し出して"実際の美味しさ"を追求しながら再現していくのが面白い。素朴な料理の基礎を祖母や母から学んだ程度と土壌を語る彼女も枠を超え、高みを目指し料理研究家に足を踏み入れている。新米パティシエや刺客的替玉アシスタントがやってきても、おばあちゃんの懐かしい味や創作に刺激を受け、料理人として彼女の方向性にのめり込んで行くのもわくわくする。

デュバリー夫人はたまたま別の漫画を読んでいて半生までは知っていたのでなんだか安直に歴史が繋がった!と嬉々。高級娼婦の出とは知っていたが歴史的に側室みたいな扱いかなと想像していたので蔑称される感じなんだなあとしみじみ…話は逸れたが本作の大統領は女性遍歴で知られてもいて男所帯の厨房でハブられるのも然りそういった点でもあだ名が皮肉めいている。観測所の送迎会でもブラックコメディ劇が催されるがこちらは逆に彼女への寮母的な愛が込められている。(どちらのエピソードも事実かは知らない^_^;それと大統領と彼女のそういった関係は作中では語られない。)

牧場や農家やってると同業とのつながりがあるから地産を愛する気持ちは解る。おばちゃん過ぎないけどそんな感じがいい。お母さんぽいのもいい。大統領役は役者になりたかった哲学者兼作家が念願叶ったデビューだそう。好きな料理を語る場面での登場だがそれが嬉しそうで嬉しそうで可愛い。
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