大企業の常務である跡宮が何者かに誘拐される。犯人は身代金3億円を要求し、その受け渡しの様子をテレビで生中継させようとする。前代未聞の誘拐事件をスリリングに描いたサスペンス映画。
まずこの映画の見所である身代金の運搬。関連会社の重役を運び屋に指名し、新宿や銀座、国立競技場など東京中をひたすら運ばせるその映像はまさしく圧巻。白昼の街中で堂々と撮影された何百人レベルの報道陣や野次馬の民族大移動は今じゃ撮影不可能レベル。
前半はスペクタクルと言えるほどの臨場感に満ちたスケールでしたが、後半は一転して事件の真相を追う捜査模様。それも悪くはありませんが、前半とちょっとギャップがあって地味目に感じてしまいました。
それでも事件の核心になったテーマは深いですし、真犯人の正体とその動機も考えさせてくれるもの。渡哲也と永瀬正敏の主演2人の熱演も必見です。ラストの2人のやり取りは心に強く迫ってきました。
昨今のサスペンス映画とはまた重厚感が段違い。非常に見応えを感じた一作でした。かなり面白い作品なのに、つい最近までソフトはビデオのみでDVD化されたのは5年前。文字通りの隠れた秀作でしたが、今では動画配信サービスでも手軽に見れるので、本当に便利な時代になったなと思います。
