TakaCine

愛の亡霊のTakaCineのレビュー・感想・評価

愛の亡霊(1978年製作の映画)
4.4
【貪り堕ちる情欲】
これ、好きだねえ♪情欲に溺れた男女が、罪を犯し破滅していく生世話物。獣のように肉体を求め合う生々しさと、怪談物として漂う幽玄さが面白かった!

『チャタレイ夫人の恋人』と小林正樹の『怪談』(本作のスタッフさんが一緒)がブレンドされたユニークさ。もっとエロチックで、亡霊に狂わされる描写があれば満点でしたね!でも好きですよ😁♪

『愛のコリーダ』ほど情欲まみれ(あちらは殆ど真っ裸で本番ぽい)でなく、更に幽霊の行儀が良すぎて「もっと祟れや!」と思いましたが(笑)

あと音声が聴き取りづらくて、字幕を出してました😝

⚠️ネタバレそこそこありなので、予備知識入れたくない方はご注意を😉!

〈配役の魅力〉
人妻と若い間男が、邪魔になった夫を殺す話(明治28年に起きた車屋儀三郎事件)を怪談物として描いた点は素晴らしいけど、ちょいと真面目で勧善懲悪な感じが大島渚監督らしい(あくまで印象です)。

せき(吉行和子)
豊次(藤竜也)
儀三郎(田村高廣)

俳優陣の体当たり演技が凄い!
特に当時40歳をすぎて、おっぱいも全裸も披露した吉行和子の度胸(周りに出ることを猛反対された)が天晴れ!真面目だが仕事に疲れすぎて夜の生活がご無沙汰な儀三郎に、毎夜フラストレーションが溜まっていく人妻せき。そこに現れた豊次の男らしさと肉体に惹かれ、羞恥と情欲の狭間に悶える女っぷりが最高でした!その可愛さに抱きたくなりました!

藤竜也の男の色気と可愛さと弱さも絶品!確実にダメ男なんだけど、時より見せる男らしさと優しさがズルい(笑)「おせきちゃん!行けねえよぉー!」と何度も叫ぶ姿に、この男の純情ぶりと幼稚さが溢れてましたね。母乳を呑む赤子に嫉妬する気持ち、俺、分かります(分かるんかいw)

捕まる前に、光の中で観念して抱き合う2人が印象的でした。

情欲にまみれる2人がなんともやるせない。

実際の2人(吉行と藤)は6歳差でしたが、藤が20代にはさすがに見えず、映画設定の26歳差は無理がありましたね😌

人間の時より、幽霊になってから存在感があった田村高廣。優しく真面目な人柄はそのままで、殺されて恨むどころか「成仏しないで、出て来てすまんなあ~」な申し訳なさが笑えます。俯いて寡黙に酒飲んだり、芋食ったりって…あまりに普通すぎる(笑)おい、ちょっとは幽霊の仕事をしてくれよ!と説教したくなりました😁幽霊としての佇まいが、浄瑠璃人形のような様式美があり、白く暗闇に浮かぶ姿が怖いよりも物哀しい。

しかし、3年も帰ってこないのに周りが騒がないなんて、当時はそんなものなんでしょうか?

川谷拓三の飄々ぶり、杉浦孝昭(おすぎ)の叫び、殿山泰司の呑気さが楽しい。婚礼の場で、大島作品常連の佐藤慶が歌ってましたね。

〈怪談物としての面白さ〉
なんと言っても素晴らしいのが、小林正樹監督『怪談』スタッフの仕事ぶり。怖さよりも、幽玄の美しさと不可解さが日本映画らしくて好みでした。自然の描写でなく誇張された世界観ですが、映画芸術として最高レベルで観ていて嬉しくなりました‼️

冒頭から、人力車の車輪がガタガタ廻る映像と武満徹の音楽が不吉な気配を醸し出して、一気に引き込まれます。

音楽が凄く凄く生理的に怖い😱💦

戸田重昌の美術も素晴らしい!うらぶれた村の景観、塔婆、お地蔵様、薄暗く所々穴が空いて荒れ果てた家屋、黄泉の国を思わせる風景に真っ直ぐに伸びる橋…貧しすぎて苦しすぎて逃げ出したくなる現実。閉鎖的で偏見に満ちた暗い世界が絶望的に拡がります。

また自然の映像がとても色彩豊かで美しく、青々と生い茂る木々、黄色の落ち葉が降り積もる紅葉、しんしんと時に猛り狂って辺り一面真っ白な雪…僕の拙い語彙力では表現しきれない、宮島義勇が撮影の圧倒的で豊かな映像表現に惚れ惚れします。

特に、帰り車の映像と古井戸から見上げる映像は、幽玄と恐怖が共存する一度観たら忘れられない名場面。光と影と霧。

一番ゾクゾクしたのは、古井戸の造形と底から見上げる外の光景。吹きなぐる雪、舞い散る落ち葉、ひょいと現れる幽霊…現実と幻想の境界がふと消える瞬間、これぞ映画の美と思えましたね😂

日本家屋独特の部屋の奥を支配する真っ暗闇が、画面や人物を覆い隠す静かな…そして得体の知れない怖さ。『怪談』でも感じた奥行きのある画面と緊張感溢れる闇が、本作でも独自の世界観を構成していました。

肉欲に溺れる人間の愚かさ、罪に押し潰される人間の弱さ、不純から純化していく恋慕の切なさ。

男と女、情念の映画でした。