秋日和

不気味なものの肌に触れるの秋日和のレビュー・感想・評価

不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)
4.0
『THE DEPTH』(2010)にて男娼を演じた石田法嗣が上半身裸の状態で、これまた上半身裸の染谷将太と向かい合っているショットからして、何やらただ事ではない、淫靡な匂いが漂ってくる。映画を観ていく内に彼らはただ踊りをしていただけということが明らかになるのだけど、だからといってあの妖しさがすんなりと納得出来る訳ではない。納得どころか、寧ろ彼らが互いの肌に触れてしまう瞬間にはきっと何かが起こるのだろうとさえ思えてしまう。
誰かが誰かに触れる/触れないということに対してあまりにも敏感な本作は、正しく「接触」の映画であると思った。何故なら恋人同士が肌を重ねることは至って当然のこととして描かれ、恋人同士ではない、男と男の肌の触れ合いはただならないこととして描かれているからである。そしてそれは前述した石田-染谷ラインだけでなく、染谷-渋川清彦(染谷の兄という設定)ライン、そして渋川-村上淳(渋川の同僚という設定)ラインにも該当するような気がした。何れのペアにも二人が「向かい合った」ショットが用意されているのだけれど、その度に画面に緊張がひた走る。
また、「向かい合う」というのはもしかしたら監督の濱口竜介が殊に意識している部分かもしれない。石田法嗣とその彼女水越朝弓はボーリング場のテーブルで「向かい合わせ」に座っているだけで二人のあまり雲行きの良くない関係性を告白するし、冒頭に書いた石田-染谷が踊るシーンは勿論いうまでもない。一方愛し合う男女(渋川清彦と瀬戸夏実)がどのように配置されていたかといえば、巧みに「向かい合う」ことを避けているから驚きだ(靴ひもの使い方◎)。
男と女、男と男。彼らの関係性がどのような変化を見せるのか、見せないのか。「向かい合う」二人、「向かい合わない」二人がどうなっていくのか。それは…………分からない…………分からないのです…………。実は前情報なしに観たので全く知らなかったのだけど、この映画、54分もあるくせに予告編という位置付けだったりする。だから続きが分からない。一応作品として纏まってはいるのですが、続きが滅茶苦茶気になる。ので、どうか本編もいつか製作して下さい……!
秋日和

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