Duckfeet

小さいおうちのDuckfeetのネタバレレビュー・内容・結末

小さいおうち(2013年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

中島京子原作の『小さいおうち』を山田洋次監督が映画化したもの。第2次世界大戦前に若くて綺麗な奥様の下へ女中に入ったタキが当時を回想して綴る手記と、おばあさんとなったタキの手記を読んで、褒めたり批判したりする甥との現代のやり取りが交錯しながら話が進んでいく。松たか子の時子奥様の色っぽさには女性の私でも惚れ惚れした。

奥様と旦那様の間の複雑な感情は映画には出てこないし、戦時中タキがどう過ごしたかなど映画では簡略化されている部分も多い。

時子奥様にとって旦那様との結婚は2度目の結婚である。最初の夫は見た目は良い男だったものの飲んだくれて事故死。恭一坊っちゃまはこの夫との間の子なので、再婚した今の旦那様にとって恭一は血の繋がらない子である。しかし旦那様は恭一を我が子のように可愛がって自分が勤めるおもちゃ会社のおもちゃをいくつも与えている。またタキの観察によれば旦那様には「男の人の匂いがしない」。つまり女性に性的な興味がなく、奥様が再婚後に子宝に恵まれないのはそのせいだろうとタキは推測している。まだ若い時子奥様が板倉さんに惹かれてしまったのには理由があるのだ。映画にはその辺の事情が全く描かれていないため、旦那様はただの横暴な昭和男で、時子がただの浮気女になってしまっているのは残念なことだ。

タキは戦争が激しくなって女中を雇う余裕などどこの家にもなくなった頃に暇を出されて実家に帰る。映画ではそれきり奥様に会うことはないが、小説の中では戦中に一度奥様に会いに東京に戻っている。そこで板倉さんと会う会わないでギクシャクした奥様との関係を修復している。そもそも映画と違い、タキが手紙を隠したにも関わらず、板倉は奥様を訪ねてきて、赤い屋根の家で最後の逢瀬を果たしていたのだ。それでも最後にタキは泣く。それが何故なのか。そこは読者が想像するしかない。

中島京子氏の小説には同性愛者がよく出てくる。この小説の場合は旦那様、タキ、睦子がおそらくそうなのだが、昭和初期にそんなことは本人達でさえその自覚もなく、ましてやその気持ちを他人に話すこともない。睦子が「みんな時子を好きになっちゃうのよ」と言うのが精一杯なのだ。

この映画を気に入った方には是非小説も読んでもらいたい。『小さいおうち』のもっと深い世界に浸れること間違いない。しかし小説を目に見える美しい姿で見せてくれた映画も私は気に入っている。