140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ANON アノンの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ANON アノン(2018年製作の映画)
3.5
【知られざる女】

冒頭から静謐な文明批判と行き過ぎたテクノロジーがもたらす逃げ場のなさと対比して、アスファルトのひび割れや車の古臭さが呼応する。「ブレードランナー」の取り調べシーン的なカットと「攻殻機動隊」的なセリフや雰囲気、アマンダ・セイフライドのドール的美貌のファムファール性。雨や地面の湿り気はないが、そのドライな雰囲気と同等に作品の静けさと電子音が常に寄り添う。条件的にPOV視点の投身自殺、FPS的な射殺シークエンスの魅力的な偽物感。管理されたことによる脆弱性が露呈される視界ハックは「零」というホラーゲームを思い出した。今敏の「パプリカ」のような過去を捨てきれない男と実在性すら危うい美貌の駆け引きは好み。大きな躍動を見せないが、時代設定的に似つかわしくないクライヴ・オーウェンの枯れ気味のダンディズムから放たれるノールック射撃シーンにゾクり。終始意味は自身で考察すべしという情報過多で伝達不足の世界にやきもきさせられる。