このレビューはネタバレを含みます
「意図せずやばいことになっちゃった人のやりがちな行動便覧」にようこそ!
溺れるものは藁を掴む!
疑心暗鬼!誰もが自分を監視している感。
何処までも深く、底の見えない闇…
途方にくれるような無力感。
自分の意志に全く自信がなくなる。ゼロ!
この時絶対に絶対に必要になる、「カウンセラー=相談相手」!
充実してる時にこそ人間って冒険しがちです。
キッカケは些細なこと…
自分がやらかした時、何処で最初の一歩を踏み外したか、何処で引き返すべきだったか、遡って考えたりしますよね。
主人公のカウンセラー君にとっては映画の開始直後から岐路に立たされていて、下水処理の悪臭と共に、臭う、臭うぞ!絶対に悪いことが起こる予感が!
そして裏社会に足を踏み込もうとするカウンセラー君へ、周りの人々から警告の嵐が!
仲間はこういった仕事の常習犯で、口を揃えて言います。
些細なことが命とりになる。
気づいた時にはもう遅い。
引き返せない。
こういった警告をしてくれるのは、ウェストリーだったりライナーだったりするのですが、これはホントに完璧でした。
警告において、話し方からセリフ、雰囲気まで、すべてがエグいまでに洗練されている。
嫌な空気感がビシビシ効いてくるのです。
儚い命を前にして、警告の有難さに震えます。ひえぇ警告がこんなにも美しいとは…
秀逸すぎる。珠玉です。
珠玉はダイヤ。
そして宝石屋のお爺さん曰く、「警告の石」
いや〜な響きですが、素晴らしい響きです。
そして、まるで危惧していた通りのことが起きます。些細なことから取り返しのつかないことに発展して、次々と死んでいく。
カウンセラー君は相談して回ります。みんなに言われます、「もう手遅れだ」
デカ過ぎる代償をもって、カウンセラー君は学ぶのです、あっちの世界のルールを。諭されている時、本当に理解した時にカウンセラー君は涙を流すのです。
不安に侵されたり手に負えない問題を抱えた時、「カウンセラー=相談相手」を求めてしまうのは人間の豊かで愚かで尚且つ笑える(この映画は同時にコメディーでもあります)性です。
「どうすればいいかわからない」って言ってのたうち回るのです。
勿論カウンセラー君に相談されたウェストリーやライナーがどうすればいいか分かるはずもなく、「分からない」「分からない」のオウム返しになってるのは最高に笑えますw
つまり、「悪の法則」ではないと思います。
むしろ「人間の法則」です。人間の法則を勿体ぶって「カウンセラー」なんて呼んじゃって、その本来相談に乗る側の立場の職業「カウンセラー」とやらが逆に片っ端から他人に相談しまくるっていう、体を張ったギャグです。
カウンセラー君には名前が有りません、多分。カウンセラーって呼ばれてます。特定の人物を指しているのではなくて、「人間の法則」としての「カウンセラー」です。
ウェストリーやライナーに関しては、カウンセラー君に警告していたことがまさに降りかかってくるのです。
みんな分かってる。口では言うのに…まじで分かってたのに、「理解」はできてないのだ。
序盤の警告が有ったからこそ生きる、残酷で、趣深い帰結。
車に挟み討ちにされるまで理解が出来ない。
首に殺人装置が巻かれるまで理解が出来ない。
フィアンセの殺人テープが送られてくるまで理解が出来ない。
警告。「気づいたら時にはもう手遅れだ」
そもそもに立ち返ります。
こんな役に立たない警告が有りますか!
この警告、もとから救いがないですよね?
「気づいた時には引き返せないこと」を理解していてもどうしようもないのです。その時にはもう引き返せないからw
でも、引き返せないことを知ってるから、現実を受け入れることならできる。
うーん…とんでもない世界です。
分かっていても死んじゃう。そこまでセットでこの世界なのです。だから恐ろし過ぎる。
救いがないと分かって、もう一度警告を思い出してください。前にも増して輝いているはずです。この映画、何回でも観れます。
人間の強欲をあざ笑うかのように、永遠に輝き続けるダイヤモンド=警告。おれはその普遍的な美しさに心を打たれ、恐れ慄き、やるせなくなりました。
周りの出来事がどう転ぶかは予測不能で、分からない。事実も闇の中。
ただし浮かび上がる2つの真実とは…
①メキシコはヤバい。
②キャメロンディアスはエロい。
The counselor - titles by Daniel Pemberton