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悪の法則のさんぴんのレビュー・感想・評価

悪の法則(2013年製作の映画)
5.0
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#映画備忘録 #20200418
#悪の法則
監督/リドリー・スコット
脚本/コーマック・マッカーシー
#TheCounselor
2013/アメリカ
劇場公開版117分
特別編集版138分
#Amazonレンタル
#映画部 #映画好きな人と繋がりたい
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まず大前提として。
この映画は万人受けしません。
IMDbは5,3/10、トマトは23%。
賛否は真っ二つに別れます。
批判的な意見は、何が何だか結局
わからないまま終わる、単調、
登場人物の設定がよくわからんなど。
対して好きな人にはとことんまで
ハマる映画なんですこれが。
ちなみに私は後者でした。観終えて
ずっと鳥肌立ってて、震えました。
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監督はブレードランナーやオデッセイ、
エイリアンのリドリー・スコット。
脚本はノーカントリーの
コーマック・マッカーシー。
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出演は正に豪華キャスト。
マイケル・ファスベンダー
ブラッド・ピット
キャメロン・ディアス
ペネロペ・クルス
ブルーノ・ガンツなど。
個人的にはジョン・レグイザモが
出てきて小躍りしました笑
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ちなみに、通常版と特別編集版が
ありますが、もし観るなら絶対に
特別編集版を観て欲しいです。
理由は後述致しますゆえ。
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お話は、ある弁護士が麻薬取引に
関わり失敗し、そこから一気に
破滅へと向かっていくという話。
麻薬カルテルものは大体面白い。
というのも、普通に日本で生活
してる限り、絶対に関われない世界を
スクリーンを通して観れるから。
普段観れないものを観れるって
映画のすごくいい点だし、それが
映画の面白さに繋がると思う。
その点、本作はもうめっちゃ怖い。
しかも話の本筋はちゃんと映画を
集中して観てないと理解できない。
同系譜で、ボーダーラインなんて
映画もあって、あれもあれで話の
全体像は少なくとも主人公からは
掴めない話になってたけど、本作は
ほんとにわからない笑
いきなりドラマの8話くらいから
見せられてるような気分になる。
そこが多分面白くないって言う人が
いる原因になってる。
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物語が、一見して動き出すのは
開始1時間を過ぎた当たりから。
でも実はその前から、物凄く丁寧に、
丁寧過ぎる程に会話の中で緻密に
伏線が張られている。
ダイヤ商の話、ブラピの暗殺道具の話、
スナッフビデオの話、明らかに
意図的に見せられるキャメロン・ディアスの
ヒョウ柄のタトゥーなどなど。
ほんと何気ない会話や描写だから、気を抜くと忘れちゃうけど、
その会話がラストですごく大事に
なってくるし、映画内で
登場人物の裏側を明かさない分、
会話からこの映画が始まる前の話、
各キャラの立ち位置を類推しないと
ほんとにちんぷんかんぷんになる。
物凄く複雑な群像劇であり会話劇。
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括弧付きで言う、物語が動き出す
1時間過ぎた辺りから、もう世界は
破滅へとどんどん加速度増して
動いていく。ピタゴラスイッチ級。
そして話が動いてからは、前半の
会話が全部伏線だったと気づく。
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ブラピの、スナッフビデオって
知ってるか?見たことないのか、
でもこういう事業に出資した時点で
お前はああいうビデオを作るやつと
同じ世界にいるんだよ、とか
ボリートって殺人機械があってな
一度動き出すともう止められない。とか、
メキシコのビリヤードしてる人の
間違った選択は修正できない。
過ちを犯した世界と、犯した過ちを
修正したいと思う世界は別物、とか
もう書き出したらキリがないほど。
特にボリートのくだりについては、
後半の伏線にもなってるし、実は
この映画全体の説明にもなってる。
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つまり、主人公はこの映画が始まる
前に既に誤った選択をしていて、
もうその過ちを修正できる世界ではない。
そして一度動き出した死が待つ世界は
もう止めることができない。
そして極めつけの、他人の運命と
自分の運命を交換することはできない。
そして背負う悲しみに価値などつけれない。
奥さんを心から愛しているか?
でも奥さんの運命と交換はできない。
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この一連のくだりはずっと震えてた!
主人公のパートナーのライナーも
すごく良かったね!こいつの結末も
実は暗示されてて、というか自分で
説明してるしで笑
ライナーのセリフで多いのが、
言いたくない、忘れたい、言うべきじゃなかった
これも伏線だから聞き逃さないように!
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そんでもってこの映画のある意味
中心人物、キャメロン・ディアス!
完全なるファム・ファタール!
物語はキャメロン・ディアスの
セリフで終わるんだけども、それが
ヒョウの話から始まって、ここ!
「ハンターが獲物を殺す姿は
興奮するわ。ハンターには、優雅さ
と美しさがある。
限りなく澄み切った心もね。美しい姿
とその心は表裏一体なのよ。習性は
殺すこと。私たち人間はまるで違うわね。
心の弱さが破滅の果てへと導く。」
このセリフが映画全体の説明であり
キャメロン・ディアス自身の説明。
なるほど、だからか!だからタトゥーを!
わかった時にはもう口ポカンで鳥肌。
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他にも書きたいことはいっぱいある!
カルテルから主人公にDVDが届くとこ!
表面に書いてある「HOLA!」の文字。
これで全てを察して崩れる主人公。
ここは良かったー!あえて中身を
見せないで察する。なんて映画的な
演出なんだろうって感動した!
死ぬなんて意味無い、カルテルには
ジョークなのさって会話もここで
効いてくるしであー!鳥肌!笑
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物凄く映画らしい映画!
リドリー・スコットありがとう!
是非観て欲しいし、オススメだけど
観たけど面白くなかったって意見は
聞き入れませんのでご了承ください。
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