桃子

殺人!の桃子のレビュー・感想・評価

殺人!(1930年製作の映画)
3.5
「真犯人探し」

話としてはオーソドックスなミステリーである。殺人事件が起こり、とある若い女性が逮捕される。裁判で有罪も決まってしまう。でも、彼女は犯人ではないかもしれない。そう直感した人物が真相を解明する、というもの。どうやって真犯人を見つけるのか、その過程は見ていてとてもわくわくする。ミステリーの王道は安心して見ていられる感じだ。
物語の舞台が劇団関係なので、演出が文字通り演劇の「舞台」を見ているようで興味深い。秀逸だったのは、陪審員が有罪か無罪かを相談しているシーンだった。主人公のサー・ジョンはただひとり無罪を主張するのに、有罪だと思い込んでいる他の陪審員全員から攻められて当初の決断を曲げてしまう。その結果、陪審員全員一致で有罪の評決になる。陪審員が意見を言い合うシーンは「12人の怒れる男」を思い出してしまった。
丁寧に調査していくと、真犯人に行きつく。犯人がなぜ殺人を犯し、いかに罪をなすりつけ、どうやって逃走したかが明らかになる。ラストシーンの幕引きはとてもしゃれていた。
スマートなミステリーだけれど、いわゆる「ヒッチコック映画」ではないのかもしれない。「マンクスマン」ほどではないが、サスペンスの要素は薄いと言えるだろう。とはいえ、誰が犯人なのか最後までわからなかったので、とても面白く鑑賞できた。勘のいい人は途中でわかってしまうんだろうなあ。
ところで、犯人探しを手伝うことになった劇団員夫婦の家で、女の子がピアノを弾くシーンがあったのだけれど、唖然とするほど下手くそなピアノで驚いた。あれは何か意味があったんだろうか?(^_^;)
桃子

桃子