マヒロ

アナと雪の女王のマヒロのレビュー・感想・評価

アナと雪の女王(2013年製作の映画)
3.5
アレンデール王国の王室に産まれたエルサは、生まれつき氷を操る魔法を持っていたが上手く力を制御出来ないでいた。誤って妹であるアナを傷つけてしまったことをきっかけに自室に引きこもりっきりだったエルサは、女王となる戴冠式で久々に姿を表すものの、そこで事件が起きてしまう……というお話。

TV放送で断片的に観たことはあったが、改めてしっかり鑑賞。
いわゆるディズニープリンセスものだけど、とことん王道を破壊していこうという野心作でもあって、一般的にイメージされる美男美女が愛し合って困難を乗り越えて……みたいな展開を意図的にスカすような話になっているのが面白い。『プリンセスと魔法のキス』もスカしのある作品だったけど、あちらは半ばギャグだったのに対して、こちらはマジで解体してやろうという気概が見られる。「運命の王子様」「囚われの姫」「呪いを解く愛」みたいなそれっぽいワードを用意しておきながら、どれもありがちな展開を迎えないところがなかなか凄い。

そもそも主題歌である『Let it go』も、歌われるシチュエーションが、城を飛び出したエルサがもうわたしゃ何も知りません好き勝手生きますみたいなノリの場面だったりして、生まれ持った能力というだけで抑圧された人生を歩んできたエルサがエゴを爆発させるのが痛快だった。
ただ、映画的な盛り上がりはこのシーンがピークな感じもあり、これ以降もひと展開ふた展開あるんだけど、どうしてもレリゴーのカタルシスを越えてこなかった。そもそもエルサを拒絶した国のために戻ってもらおうとするのはなんか腑に落ちない……と考えるのはひねくれすぎかな。ここら辺の違和感は次作でしっかり回収してくれるのが流石の抜かりなさだが、今作だけだと若干モヤモヤが残るかも。

特殊能力をマイノリティのもつ特性の比喩として描いた作品として、古くは『キャリー』、後『X-MEN』なんかがあるけど、そこまでセンシティブなところにまでは踏み込まずちょうど良いところに収まったかなという印象。
何にせよ、キャッチーなキャラクターや音楽でシンプルに楽しめるだけでなく、そこに深いテーマも織り込むというディズニーの底力を感じさせられる一作だった。

(2021.156)
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