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世界一美しい本を作る男 ―シュタイデルとの旅―のakubiのレビュー・感想・評価

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いい匂いがした。ロバート・フランクはそれを「君の香水だね」といった。本を手にしたときにわたしも真っ先にすることだ。その本の纏った香りを、胸いっぱいに吸いこむ。そして紙の感触をたしかめ指をすべらせ、頁を捲るときめきの瞬間を待ちうける。
彼のつくる本は、アーティストたちの趣旨を汲みとり、いずれ手にするわたしたちの想いまで綴じこみ、豪奢な世界における密やかな安息の地にわたしたちを導びいてゆくよう。
その仕事ぶり以外の彼自身についてはとりわけて語られることはなく、切り取られた仕草や言葉や幾つかの持ちもので少しだけGerardが知れる、そんな描きかたも好ましいドキュメンタリーだった。
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