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マッキー/Makkhiのfumingのレビュー・感想・評価

マッキー/Makkhi(2012年製作の映画)
3.8
主人公がハエ、という何とも奇妙奇天烈な映画。アホなのか天才なのか。
物語は、不幸にも死亡してしまった主人公がハエへと生まれ変わり、自分を殺した男に復讐を果たすため、そして愛する彼女を守るために奔走するというもの。さながらインド版『ゴースト〜ニューヨークの幻〜』といったところか。「でも主人公はハエなんでしょ?」と思うなかれ。ハエにはハエの戦い方があり、主人公はその特性を活かして宿敵を追い詰めていく。その過程がなかなかにえげつないものの、コミカルに描かれいて非常に痛快。徐々に憔悴していく悪役の姿に、可哀想と少しばかりの同情を覚えるほどである。一匹のハエをここまで応援したくなることがかつてあっただろうか。もちろんインド映画特有の歌とダンスのシーンもある。無論ハエで。
「恋する輪廻〜オーム・シャンティ・オーム〜」等でもそうであったが、やはりインドは輪廻転生の思想が強く、この映画もそれを顕著に反映した作品だといえる。文字通り、一寸の虫にも五分の魂であり、生まれ変わっても変わらぬ愛を貫き、そして宿敵を討たんとする執念には感嘆させられると同時にインド映画における根源概念のようなものを感じ取ることが出来る。感動モノというよりかは笑える映画ではあるが、ハエとなっても強く生きる主人公の姿は一見の価値あり。
輪廻転生。かつて生きていた人達は、自分の知らぬところで別の何かに生まれ変わっているかもしれない。この映画を観終わった後は虫や小動物、植物など生あるもの全てに対して優しくなれるかも。
そして因果応報。己のしでかした行いは必ずや自分に返ってくるし、たとえ相手が虫ケラであっても侮るなかれ。
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