Daisuke

夢と狂気の王国のDaisukeのレビュー・感想・評価

夢と狂気の王国(2013年製作の映画)
3.9
[狂気を支えた者たち]

『借りぐらしのアリエッテイ』の米林監督がジブリを抜けて作った第1作目『メアリと魔女の花』を公開初日に鑑賞してきました。
実はメアリの鑑賞中、この『夢と狂気の王国』が頭で同時上映されていました。
勝手な妄想でしかないですが、あの作品には宮崎駿監督とスタジオジブリに対しての想いが詰まっていたように見えたからです。(メアリの感想は後日)

夢と狂気。

この作品では『風立ちぬ』の作業現場を、宮崎駿監督や鈴木敏夫さんの言葉と共に映し出されていきます。深い緑と暖かい陽射しの中、黙々と仕事に向き合う姿勢。

宮崎駿監督のルーツも少しだけ見え、夢を追いながらも苦しんでいる様子がこちら側にも伝わってきました。特に零戦が書けないという部分が象徴的に見えました。

無限の可能性であるアニメーション。

無限の可能性だからこそ、何が正解かわからない。

延々と鉛筆で自分の中から何かを絞り出していく。それを毎日毎日繰り返しているのです。
この作品を見ていると、目で見える「狂気」ではなく、すでに狂気と一体となっているような感じにも見えてきます。

『風立ちぬ』のラストシーンの台詞。
この変更前が、すでに狂気と共にある状態だった事がハッキリわかる部分だと思っています。
庵野監督は変更して良かったと言うほど、変更前のラストシーンは狂気の色が濃く見えました。

そして、そんな狂気を支えているのはスタジオジブリのスタッフたちです。暖かい笑顔で優しそうな人たち。しかし、鈴木さんと庵野監督が話す一瞬のセリフが、この作品で映されていない部分が凝縮されてると感じました。

「宮さんは、すべての人を自分の下駄だと思っている」

そして、一番弟子であり後継者だと言われていた米林監督がラストに一瞬だけ映っています。あの時、何を感じていたのか。

この作品の一年後、米林監督はジブリを抜け『メアリと魔女の花』が出来上がります。この『夢と狂気の王国』で描かれていなかった「米林監督が見たジブリ」。私はメアリにそれが描かれていたように見えました。

『メアリと魔女の花』の「夜間飛行」と言う花は七年に一度しか咲かないという設定になっています。

この「七年」とは何か。

次回『メアリと魔女の花』の感想で、ちょっとした妄想を含めてお話ししてみたいと思います。
Daisuke

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