無味乾燥な日常に喘いでいる少女(伊佐山ひろ子)が、狡猾なスリ師(荒木一郎)に隷属してしまう。窃盗行為を刺激剤にした非日常性を描いている、日活ロマンポルノ。伊佐山ひろ子がキネマ旬報主演女優賞を獲得している。
全共闘時代の活動家をスリ集団に置き換えて、なおかつアメリカン・ニューシネマの要素を盛り込んだような作品。窃盗行為の一部始終を緊張感たっぷりに描写しており、「ケイパーもの」として高い水準が保たれている。
主人公が出会うスリ師は、ルパン三世のような浮世離れしたタイプ(谷本一)と、女を傀儡にするストイックなタイプ(荒木一郎)の二名。異なる性格をもつ人物がバトンタッチするような展開なので、演者の一挙手一投足を楽しむことができる。
神代辰巳脚本ということもあり、ミニマリズムとダイナミズムがミックスされた、独特のスタイルに満ち足りている。ロベール・ブレッソン監督「スリ」の成人映画バージョンという捉え方をすることが可能。