"Dr.ストレンジラブ"
ジム・ジャームッシュ産ヴァンパイア映画。
『デッド・ドント・ダイ』つながりでレビュー。
はじめにはっきり言ってしまうと、ストーリーはあってないようなもので、現代のデトロイトを舞台にヴァンパイアカップル、アダムとイヴの暮らしを描いただけの映画。
すでに何百年も生き続けてきたヴァンパイアということで、長い間人間社会の移り変わりを目にしてきたアダムとイヴ。失われた文化、遺産を懐かしみ、まるでゾンビのように自己破壊的に生きる現代人たちの姿にうんざりしていた…。
これといって物語的に何か大きな事件が起きるとかそういうのはまったくもってない。途中にイヴの妹エヴァが登場し、二人を引っ掻き回すことはあっても、基本的には淡々と物語は進む。
じゃあ何が面白いの?
はっきり言っちゃうとキャスティングの魅力に尽きると思いました。
ヴァンパイアを演じたトム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントンのが素晴らしくクールなんです。
元々、色白でどこか人間離れした雰囲気の二人でしたから、ヴァンパイア役が妙に説得力がありましたね。
また、ヴァンパイアという古臭いキャラクターをジム・ジャームッシュ的な解釈で現代版にアップデートしていたのは見事でした。
現代ではアンダーグラウンドなミュージシャンとして活動しているアダムが、実は過去の偉大な音楽家たちに影響を与えていた?というのは面白かったし、スマホを持っていたり、イヴとスカイプ的なもので会話したり、YouTubeを見たりと、なんだかんだで現代に適応している姿がシュールでした。
ヴァンパイアということで、当然人間の生き血が必要なんですが、現代ともなると血を手に入れるのも一苦労。夜な夜な病院に忍び込んでは馴染みの医者から売り捌いてもらわなきゃならない。渇きを癒すのも大変!
全体的に倦怠感が漂う独特な雰囲気のある映画でした。
美しく、ときにシュールな二人のヴァンパイアのロマンスを見ていると、この世のどこかにこんなヴァンパイアならいてもおかしくないかな…なんて思わせる。
夜中に睡眠導入剤のように、うつらうつらと見るには最高の作品。