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オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴのdenizのレビュー・感想・評価

3.7
「まぁよろしく伝えてくれ。あの自滅的なロマンチストのろくでなしに。」

トム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンによるビターなラブストーリー。
ひとつ特異なのは、ふたりが吸血鬼であること。
激しくお話が動くわけでもなく、「吸血鬼」という設定に付き物なバトルアクションもなく。
長く永い時の流れに身を委ねながら、人間の社会の中で、淡々と、ひっそりと、日々を生きるふたりの様子が描かれる。
互いしか見えない、互いがいないと生きてはいけない。
を、苦しいほどに感じさせてくれる映画。

メインふたりがとにかく浮世離れしている。黙って佇んでいるだけで、確かに人間じゃないと納得出来てしまう、妖しくも温度を感じさせない美しさ。
そこに飛び込んでくる妹役のミア・ワシコウスカは好んでひとを破滅させていくタイプの魔性美女。
画面の顔面偏差値が、いつだって振り切れてる。

舞台は異国情緒溢れるモロッコに、廃墟だらけのデトロイト。
最新とは言い難い日常品や、使い古されたレコード盤が奏でるメロウな音楽。

いよいよ本格的な熱帯夜が始まったこの頃。
心地良くも非現実なひんやりさを与えてくれる、大人の深夜の映画鑑賞にお薦めの一作。
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