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青天の霹靂のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

青天の霹靂(2013年製作の映画)
3.7
【劇団ひとり凄い!!】
Netflixで観る映画を探していたら、劇団ひとり監督の「青天の霹靂」があった。お笑い芸人である劇団ひとりの監督デビュー作。近年、吉本興業が沖縄国際映画祭を開催している関係で、お笑い芸人に映画を撮らせる風潮がある。しかしながら、お笑い芸人は映画を作るノウハウを持っていないため、アイデアこそ面白いが、観るに耐えかねる映画が正直多い。追随するように他の事務所のお笑い芸人も映画業界に参加するのだが、やはり北野武を超えるお笑い芸人監督は未だに生まれていない。そんな残念なお笑い芸人映画が多い中、この「青天の霹靂」はシネフィル界隈でも「面白かった」という声を沢山聞く。果たして...

☆「青天の霹靂」あらすじ
冴えないマジシャンの轟晴夫はある日、行方不明になっていた父親がホームレスとして死んでいることが分かる。父の住んでいた河原にやってきたら、稲妻が直撃!気がつくと40年前にタイムスリップしていた!

☆凄いデビュー作!!!
劇団ひとりは「クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃」の脚本も手がけており、昨年賞賛した。そんな劇団ひとりのデビュー作は、感情の押し売りな日本映画に「これぞ本当の♡ウォーミングドラマだ!」と突きつける傑作だった。

通常、この手の親子関係やタイムスリップが絡む日本映画は、お涙頂戴のサントラをガンガンかけ、臭い演技をしまくり、シネフィルを苦しめる。感情の押しつけの他ならない。しかし、「青天の霹靂」は予告編の雰囲気に反し、サントラには頼っていません。まず、アヴァンタイトル部分は全くもって音楽がない。大泉洋の演技を「長回し」で魅せること、魅せること。観客は音楽によるバイアスなしに、大泉洋扮するマジシャンの性格に没入することができる。そして、本編が始まっても、基本的には役者の演技、お笑い小屋でのコントをしっかり魅せるので曲は使われない。そして、ここぞ!という時に音楽を流す。それによって涙が出てくる仕組みになっているのだ!

どこで学んだんだと思うほどのバランス感覚です。

☆映画内の手品問題も解決
ライムスター宇多丸も言及していることだが、基本的に映画と手品は相性が悪い。映像編集でごまかせるので、興醒めしてしまうからだ。しかし、劇団ひとりはその特性を逆手に撮っている。まず、長回しを多用することで、手品に説得力を持たせている。そして、ここぞ!というときに、「この映画はファンタジーなんですよ!」と言わんばかりの素敵な魔法を魅せる。このなんたるバランス感。非常に危険だと思われることも、長回し自然体な演出の強弱でもって口うるさいシネフィルも納得の内容になせた。これは他の日本の大衆映画監督にはできまい。

つまり、劇団ひとりは間違いなく北野武に継ぐ巨匠映画監督になるだろう。北野武はアート映画・ヤクザ映画路線なので、劇団ひとりはお笑い芸人初成功した大衆映画監督になれそうだ!今後の活躍に期待だ。
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