ダイセロス森本

スーサイド・ショップのダイセロス森本のレビュー・感想・評価

スーサイド・ショップ(2012年製作の映画)
3.6
自殺洋品店が舞台、店主は明らかに顔色悪いし、店主夫妻の子供たちも猫背&目死んでる状態。死にたい人しかやってこない洋品店で、彼らは客にたくさんの商品を紹介。首吊り用の縄は質も選べて、毒は飲むものから吸引型、塗るものまである。日本刀も置いてあり、「セップク」できるように店主がいつも研いでいるらしい。手首をシュッとすれば死ねますよ!とアピールするカミソリの刃は息子が毎日研いでいる。
公の場での自殺が罰せられる時代に、公に店を構えている彼らを罰しないのも面白いなあと思う。死ねなかったら罰金を背負うことになるという大変な仕組み。

街ではどす黒い顔をした人たちが歩き、40分にひとりは自殺をしているという。しかし成功はわずか2割で、あとの人々は罰金という思い刑を背負うことになってしまっている。スーサイドショップの夫妻は、この可哀想な8割の人たちのために、即死できるグッズを販売している。

ある日夫妻に3人目の子供が誕生する。産まれた時から笑顔を絶やさず、可愛らしい男の子なのだが、スーサイドショップの一家は笑顔を禁止としていて、いつも暗い生活を強いていた。男の子(アラン)は、家族で楽しく話している絵を描いたのだが、これも母に破られてしまう。
アランくんはこんな世の中を見て、「人間はどうして地球に生まれたの?」と素朴で、でも難しい問題を抱える。人間はもっと楽しく生きられるはずなのに、両親は自殺を促す店を経営している。兄と姉も、真っ暗な顔をしている。

アランくんの友達は、みんな楽しいキャラクターなので、ますます不思議になるアランくん。彼はこんな世界を変えるために、人々を楽しませようと頑張るが…。この一生懸命さが可愛くて、子供なりにどうしたら愉快な人生が送れるのかを考えるなんて立派。

アランくんの笑顔は、この街の人々の支えになったに違いない!

終わり方は面白かったので、これでよし。すぐに鬱が完治するわけではないキャラクターたちが人間味にあふれているので楽しかった。
いっぱい人が死ぬけれど、それでわかること、得ること、本当に大切なことは何なのか、最後まで見ればわかるはず。

「絶望したら死ねばいいのさ!」をどう変えるか、これは人間が続く限り、永遠の問題なのかもしれない。

ビバアラン!