TAK44マグナム

LIFE!のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

LIFE!(2013年製作の映画)
4.2
ベン・スティラー監督・主演のファンタジー系ドラマ。
共演に、ショーン・ペン、シャーリー・マクレーン、クリスティン・ウィグ等。

フォトグラフ雑誌「LIFE」で働くウォルター(ベン・スティラー)は、冴えない毎日を過ごしていますが、ネガ管理の仕事ぶりには定評があり、写真家のショーン(ショーン・ペン)の信頼も厚い中年男。
彼は、時折、自分がヒーローになったり、好きな女性を簡単に口説けるような、空想の世界に入り込むことがありました。
ある日、出社してみると「LIFE」の休刊が決定され、社員の解雇が始まっているではありませんか。
驚くウォルターでしたが、ショーンから託された、最終号の表紙にふさわしいとされる写真のネガが見つからないことに焦ります。
何とかしてネガが必要なウォルターは、同僚かつ片思いの相手でもあるシェリルの協力をあおぎ、世界中を飛び回っているショーンを探そうと決心、単身グリーンランドへ飛びます。
そこから、空想ではなく、ウォルターにとって現実での冒険が始まるのでした。

映画の前半は、空想のシーンが頻繁に挿入され、VFXを駆使した見どころになっています。
しかし、ウォルターのショーン探しが始まってからは、空想シーンは減り、代わりに現実での冒険描写にとってかわる構成になっているんですね。
サメと戦ったり、火山の噴火に危うく巻き込まれそうになったりと、現実なのか、空想なのか、紙一重みたいな場面もあって、こういった映画で、こんなスペクタクルを味わえるなんて何となくお得感があります(苦笑)。

グリーンランドやアイスランド、ヒマラヤのロケーションがダイナミックで美しく、目の保養になるかと。
だけれども、ここで、劇中のショーンがウォルターに語る言葉が印象的だったのを思い出します。
写真におさめるために待ち続けたユキヒョウが姿を現してもシャッターを切ろうともファインダーを覗こうともしないショーンに対して、ウォルターは「撮らないのか?」と訊ねます。すると、ショーンの答えは「本当に大切なものはカメラではなくて自分の目で味わいたい」といった風のものでした。
これは非常に共感できました。
子供の運動会でビデオカメラをずっとまわしていて、ファインダーや液晶画面越しにしか子供を見ていないことに違和感があるんですよね。
記録として残すことも確かに大切だけれども、記憶として残すには、たぶん、肉眼で見たほうが脳に焼きつくのではないかな、と思うんです。
自らの目でシャッターをきることも大切なのではないかと。
そんな風に思うと、映画の中の映像として美しい景色を見るのと、実際にそこへ行って、見て感じるのでは雲泥の差があって、「どうして自分は家でテレビの画面を覗きこんでばかりいるんだ?」と、少し哀しくなってしまったり。
でも、やっぱり、なかなか自由はきかないわけで、自分が出来ない体験を擬似的にでも感じさせてくれる映画の世界は、やはり素晴らしいわけでして・・・。

ウォルターの得意技がスケートボードつていう設定なのですが、スケボーでの滑走は迫力満点で、あんな大自然の中の一本道をどこまでも滑れたら気持ちよいだろうなあと思いました。
(ちなみにスケボーなんて出来ませんが・・・(汗))

ウォルターは最終的に、ショーンを探す旅で、人生における大切な教えを得ます。
それは「最初の一歩を踏み出す」という事です。
嵐が来る中、酔っ払いの操縦するヘリに乗れるかどうか?
その一歩が踏み出せるのかどうか?
ウォルターに勇気を与えたのは、(空想の)シェリルでした。

そして、ラストでは、ウォルターは小さな一歩を踏み出します。決して、全人類のヒーローになるとか、そういった大それた事ではなくて、誰にでも経験があるであろう、本当に小さな、けれども、誰の人生においても大切であろう「小さな一歩」なんですね。
ベタと言ってしまえばそうかもしれませんが、ウォルターが得たモノは、確実に彼が欲していた幸せへと続く勇気であって、深く感銘を受けました。

映像と音楽が素晴らしく、キャスト陣の演技も流石でした。
特に、ベン・スティラーは、個人的に「ミステリーメン」で怒りっぽい自虐ヒーローを演じていたイメージだったので、こんなに達者な役者さんなんだなと再認識。
また出番は少ないながらも、やはりショーン・ペンは存在感があって良かったです。「初体験リッジモントハイ」のオチャラカ学生がこんな立派になるなんて、俳優って素晴らしいですねえ。

何かちょっと旅にでも出てみるか、と思っていたりする時に観ると、また違った発見があるかもしれませんね。
オススメです。


レンタルブルーレイにて