ぺっこり180度

LIFE!のぺっこり180度のレビュー・感想・評価

LIFE!(2013年製作の映画)
4.7
観てズキズキもヒヤヒヤもするし、所々「すげーふざけてるな~」っていうシーンもありつつ
総じて感じるのは「ワクワク」感。
希望とか期待とかどうかしたら生きる楽しみまで感じる。大好きな映画。

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整理整頓された部屋。家計簿。
ちょっと残念な感じのする、でも愛おしい家族。
十数年勤め続けている職場。堅実な仕事ぶり。繰り返す日常。
主人公ウォルターは淡々と真面目に生きている。
ただ何か受け入れられないものがあるのか、時々妄想空想(若干常軌を逸しているレベル)で現実逃避して気を紛らわしていはいるけれど。
しかしある日トラブルが発生。大切なネガが見つからない。
ネガを追い、彼の脱日常が始まる。


ウォルターが、(父が亡くなった時から)積み重ねてきた「日常」。
決して動かせない程強固に見えているその世界だけど、
物語が進むにつれ「動かせない」は思い込みに過ぎない事に気づかされる。
実は、ほんの一歩、体と気持ちを踏み出すだけで、目の前の世界は変えられる。
その気になりさえすればいとも簡単に変えられるのだ。
だってグリーンランドや漁船やサメやアイスランドは想像上の存在ではない。
この世のどこかに実在しているのだから。

つまり彼がしきりに妄想の世界に逃避する程度に不満足だった日常は、
実は彼自身の選択の結果。

さて。

ところであなた、前半の日常に甘んじるウォルターに共感してましたね。
あなたが今、実在しているはずの憧れの脱日常の世界に行けないのは、何故でしょう。
「イマイチ満足していないといいながらその日常を選んでいる」のは、
他ならぬ自分自身じゃないですか?

あれ?映画を楽しく見ていたはずが、
いつの間にかウォルターを通りこして自分に上記の問いが突きつけられている気がする本作。
多分、前半のウォルターの気持ちが分かる状況に居る大人程、ザックリやられるのではないかと。
(で、私にはグッサリザックリ突き刺さったわけです。三枚おろしになるくらいにザックリ。)

とはいえ映画の語り口は軽く
(特に妄想シーンは度が過ぎる程で。何なんだあのベンジャミン・バトンのパロディ😂)
見やすいし、
何よりとにかく雄大な自然、特にアイスランドの風景はもう美しくて美しくてただただ解放感爽快感。

非日常の後にはもちろん日常生活も待ち受けているけれど、
それもまたこれまでとは違うきらめきを帯びる。
とにかくああ世界って美しいなあ。広くて狭いなあ。楽しいなあ。
人生って良いものかもしれないなあ。なんて、じんわり思える作品。

ストーリーが好き。画が好き。色が好き。音楽が好き。
大好き。
あ~好きすぎて長くなった。

あと物語中に出てくる会社の社訓が、座右の銘にしたくなるくらい良い。マクドナルドの方じゃない方。