EDDIE

渇き。のEDDIEのレビュー・感想・評価

渇き。(2013年製作の映画)
4.0
全員狂ってる…“映画=フィクション”という世界観に身を委ね、理解することより感じることを優先すれば間違いなくセラピー映画となる。
斬新かつ大胆な編集と独特の色彩。中島哲也監督の実験的試みに翻弄されるな!

これ凄いですね…小松菜奈は実質映画デビュー作?とんでもない存在感。
映画自体もざーっと見てみたらレビューとか散々だけど、個人的にはめちゃくちゃ夢中になってしまいました。
フィクションだからこそなせる奇抜なカット割を多用した編集。
完全に魅せられました。

これって出てくる人物が余すことなくクズばかりなんですよね。
役所広司演じる主役の藤島昭和は最たる例で、小松菜奈演じるその娘・加奈子。
浅井(妻夫木聡)や愛川(オダギリジョー)、遠藤(二階堂ふみ)、咲山(青木崇高)、松永(高杉真宙)、金髪野郎(葉山奨之)などなど。
だからこそ、共感とかで評価することは不可能なんですよね。
この映画を共感していたら、それはそれでヤバいから!

キーパーソンの1人ボク(清水尋也)は、ナヨナヨしていて虐められていて、唯一の救いが笑顔で天使のように接してくれる藤島加奈子。
だけど、それは深い沼と闇への入り口に過ぎなかったわけですね。

作中は狂ったように娘を探しながら、どんどん人を傷つけていく藤島父。
娘を殺してやりたいほど愛しているわけです。そして、娘と会うためにはどんな犠牲も厭わないという。
まぁさすが役所広司というだけあって、もう引き込まれてしまいます。東先生役の美しい中谷美紀ですら容赦しません。とんでもなく狂っています。

その生き写しのような存在がボクなんじゃないかなぁと。

森下(橋本愛)と長野(森川葵)という友達の組み合わせも良きでした。森川葵はベリーショート(ほぼ坊主)のピンクという出立ちも今考えればレアです。
そして藤島父からの暴挙にも屈しない森下こと橋本愛の鬼のように狂った強さも良かった。

世間的(Filmarks的)にはかなり評価は低いようですが、俳優は全員が上手いし、中島哲也監督が何を思ったかはわかりませんが、映画というフィクションだからこそできる時系列無視の実験的な編集カットがとても面白かったですね。
いやぁ、個人的にはこの映画好きですよ。

繰り返しになりますが、とにかく小松菜奈ですよね。
一応Wikipedia情報によると本作よりも前に『シャボン玉』という作品と『ただいま。』という作品がありますが、それぞれ短編・ショートフィルムのようなので、本作が長編映画デビュー作となります。
それでこの堂々たる演技、体当たりの演技、天使から悪魔のような顔まで見せる演技、すべてにおいて新人とは思えぬほど。
驚異的ですね。

作品としてハマるかどうかは責任取れませんが、未鑑賞の方は小松菜奈の演技を見るだけでも価値があると思います。

※2021年自宅鑑賞79本目
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