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渇き。の教授のレビュー・感想・評価

渇き。(2013年製作の映画)
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日本でタランティーノをやるとダサくなってしまうのか。
それとも、タランティーノの映画は好きだけど他の映画にはあまり愛情がないならそうなるのか。
冒頭のタイトルバックから白けてしまう。

不貞を犯した妻に対して…なら今村昌平監督の「うなぎ」の役所広司は怖かったし、描写もネチネチして楽しかった。
それに対して同じような設定を同じ俳優が演じてもこうも情念が違うものかと驚く。

役所広司と黒沢あすかと妻夫木聡などの主要俳優陣の演技の方向性、バランスが著しく違うのも気にはなるし、ここは多分に意図的であることは充分に踏まえても、シーンごとのテイストが違うのも、肝心の物語に没入できない要素になっている。

映画における「怒号」というのも表現の仕方があって感情がヒートアップすればするだけ、言葉に対しての敏感さと演出のセンスが問われると思う。
その点、本作はすべてが記号的に映る。
「スタイリッシュ」に描こう感が非常に前に出過ぎてコミック的だ。

映画が映像を駆使した感情を描くドラマだとするなら、どうしても感情を描いているというよりは、感情を直線的にディフォルメしているだけに見えてしまう。

「シャブ」とか「クスリ」とかセリフがマヌケに響く。
リアルでもなくリアリティでもなく。
ムードだけが展開されていく。

ある意味で、得体の知れない可奈子役の小松菜奈だけが危うく微妙なラインを演じてはいたと思うし、魅力的だったけれど、それでもセリフや演出がいかにも仄めかしています、的なあざとさでもったいなかった。


狙っているラインはアラン・パーカーの「エンゼル・ハート」あたりのようだが…映画的にもこの「生まれ持った悪魔」を描くための知識的にも到底及んでないのは、監督自身がやはり「映画」に精通していないからだ。
描かれている暴力があまりにも、映画的センスがなくて、僕はとても擁護できない映画だった。
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