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渇き。のEirainのレビュー・感想・評価

渇き。(2013年製作の映画)
3.2
暇つぶし用として購入した本が、図らずも本作の原作小説(『果てしなき渇き』)で、読み終えたので記念に再鑑賞・・・しようとしたのだが、セルもレンタルも配信も無い!「なぜ!?」と調べてみたら、出演女優から性被害の告発があり封印されてしまった模様。仕方ないのでネットオークションでBlu-rayを購入して鑑賞。(幸い(?)高騰してなかった。)

元刑事のクズ親父・藤島が、娘・加奈子が失踪したという元妻からの連絡を受け、娘を探し出すために奔走(いや、暴走か。)する。そして明らかになっていく、知られざる加奈子の"像"―――。

所々設定は変わっているが、原作小説で描かれた"渦巻くあらゆる暴力"がしっかりと再現されており、映画化作品としては非常に良い出来。むしろ原作小説よりも好印象。原作小説は、ミステリー要素を匂わせるシナリオ構成の割には「あっ」と言わせるような展開もなく、ただのバイオレンス作品で終わってしまったと少々ガッカリ感があったが、本作は、映像という直感的な刺激と映画化に当たっての内容の圧縮が、良い塩梅で「勢いのあるバイオレンス・エンターテイメント」になっていたように思われる。(その分、展開についていけない人が続出しそうだが。)

原作からの改変部分は諸々あるが、個人的に一番気になったのは、藤島が娘・加奈子を暴行する過去のシーン。原作では、(自分の記憶違いでなければ、)この時点では加奈子は"狂って"おらず、むしろこの件が主因で"狂って"しまったように描写されていたのだが、本作では、この時点で既に"狂って"いたように描写されていた。加奈子の"狂気"が先天的(クズ親父の血)なものなのか、後天的(クズ親父の暴行)なものなのかで、藤島と加奈子に対する印象が違ってくる部分だ。原作では真面目な性格だった藤島の元後輩である警察官の浅井が全くの悪人(というかサイコパス?)にされている点や、不良たちのパーティーシーンのエキセントリックさなど、意図的に"狂気感"を上げていると感じられるので、加奈子の"狂気"も先天的であるような描写にしたのかと想像。

本作以外にも『告白』、『来る』と、素晴らしい映像化をしてくれている中島監督。好きな監督なんだけどなぁ・・・やっぱり犯罪まがいの行いはいかんね。(園子温しかり。)
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