メルヴィルの長編デビュー作にして傑作
この作品は殆どフランス人の叔父と姪にドイツ将校が一方的に語りかける構図の繰り返しとなっているけど、戦時中のフランスとドイツの関係の比喩的になっているその構図が白眉なライティングと端整な演出の為実に美しい印象を覚え、一風変わっていて冷え冷えとした関係が極上の視覚的芸術となる様に感嘆せざるを得なかった
その関係に訪れる終焉も、少しだけとはいえドイツ将校が馴染んできていたこともあって儚い美麗さがあり、特別劇的な演出がなされているわけでなくただ些細な変化が生じただけなのに胸が揺さぶられて堪らなかった
あと自分は基本モノローグの多用を苦手とする人間なのだけど、この作品ではポーカーフェイスを装う老人が裏で色んなことを考えてるって効果が出ていたから好印象だった
調べたところこの作品は経済的に逼迫した状況下で撮られていたらしいが、逆境の中熱意と確たる技術を込めて見事な傑作に仕上げたメルヴィルには脱帽する他なく、ジャン・コクトーがこの作品を見て自身の代表作を撮らせたくなった気持ちもよくわかる