ryosuke

海の沈黙のryosukeのレビュー・感想・評価

海の沈黙(1947年製作の映画)
3.9
半分以上一つの室内で進んでいくのだが、構図やライティングの妙でしっかり惹きつける。
抑制の効いた作品では些細な事が印象深くなる。姪が初めてドイツ兵の方を見る際のアップの鮮烈さ。家人のノックかと思いきや部下で、「ハイルヒトラー」と挨拶されるシーンも何かゾッとさせられる。
沈黙の中で時計の針の音が響く様も印象的。
特殊なシチュエーションの中で、言葉として発されない微細な感情の揺れが、胸の動悸や手の震え、細かい表情の変化を捉えることで表現される。
姪がドイツ兵に婚約者の話をされた際の心なしか微妙な表情(恋心であるかは微妙だが)、虫の足をもぎ取ったエピソードに至った際のわずかに口角があがったように思える様子等々。見ている側にとっても確信は持てない程の微妙な描写がなされる。
手を取りあおうとする刺繍の模様が実に印象的。
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