戦争シーンが出てこない、ほぼ密室劇という陰影の強いモノクロームの独特な映像で描いたレジスタンス作品。フランスの映画作家ジャン=ピエール・メルヴィルの「沈黙と海」の映画化。
ナチス・ドイツの占領下にあったフランスでドイツ軍に接収され将校の寄宿先として、姪と老人が生活している家にナチ将校が寄宿する。
将校はフランスに憧れていた元音楽家で人格者。彼は毎夜、独り言を通じて二人に語りかける。自身の過去、フランスへの賛美、そして母国が行った残虐的な行為への嘆きを…。
でも、ふたりは、気持ちを動かされながらも、平然を装いながら"海のような沈黙"を保つ。
ナチスの残酷な姿、男女の恋愛なども、直接描かれることもないが、将校の話だけで十分に伝わる。
抵抗への沈黙が生みだすラストの感動!
人間精神の崇高さへの憧憬に満ちあふれた見事な作品です。
監督は、のちにアランドロンの「サムライ」や「仁義」を撮ることになる、ジャン=ピエール・メルヴィルの長編デビュー作。
ただ好き嫌いがわかれる作品なので、誰にでも進めるようなエンタメ作品ではありません。