すぎえ

ラストエンペラーのすぎえのレビュー・感想・評価

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
3.7
いつまで乳呑み子でいるつもりだったのかな、このラストエンペラーは。

中華人民共和国・イギリス合作による、清朝最後の皇帝で後に満州国皇帝となった愛新覚羅溥儀(あいしんかくら ふぎ)の生涯を描いた歴史映画。

溥儀の自伝「わが半生」を元に、『ラストタンゴ・イン・パリ』のベルナルド・ベルトルッチが、監督・脚本。
溥儀を演じるのは笑顔がステキな中国系アメリカ人俳優ジョン・ローン。

手厚く育てられた溥儀役を、ツライ幼少時代を過ごしたジョンが演じているのがとても興味深い1本です。
ジョン・ローンの実生活は、幼少期孤児として老女に引き取られ、ご飯もろくに与えられず空腹と体罰に耐える日々。
中国新電影のインタビューでは「幼少期のトラウマは、私の人生に大きく暗い影響を与えている」「呪われているようだ」と語るほど。

それに対して『ラストエンペラー』の主人公・溥儀の教育環境も特殊なものでありました。
どんな悪さをしても怒られない、
罰を受けるのは溥儀の周りにいる宦官たち。

溥儀が命じれば、宦官は書物用のインクだってゴクゴクと飲む。

調べてみると「ひざまずいてあの汚物を食ってみろ」などとも言っていたようです。
すごい恐ろしい幼児です。
幼児と言えども紫禁城の中では最高権力者ですからね、何でも許されてしまうわけです。

私が同じ立場だったら
『永遠に食べれるような、胃もたれしない最高の油と肉を使った豚カツを早くよこしな。
出来ないとかほざくなよ。』
ってきっと言ってるな〜〜

とにかく、この文だけ読むと
「溥儀は何でも自分の思い通りに出来る自由気ままなワガママBOY」
と思えますが実際は不自由だらけ。
なんたって自分の家の敷地から、一歩も外に出る事を許されていないですからね。

家の玄関から外に出た事がない人って殆どいないですよね、
出たくても出れない、家に縛られる溥儀。
世間との関わりを絶たれる孤独な溥儀。

そんな彼の心の拠り所は乳母だけ。
「彼女といる時だけ落ち着く...」
溥儀は9歳頃までおっぱいを吸うほど彼女に甘え続けます。

このシーン、子供が乳母に甘えてると見えると同時に
エロティックさを感じるような光景でもある、
それもそのはず溥儀にとって乳母は想い人だったようです。

劇中では
「she is my butterfly(私の好きな人だ)」
と彼女を思って呟くシーンが。
(9歳頃、乳母と離ればなれになった時に溥儀が発した言葉)

「彼女といる時だけは自由に飛べる蝶になれたんだ。」
という意味合いなのでしょうか。


厳しすぎる環境で育ったジョンと甘やかされた環境で育った溥儀。
相反するように思えますが、深い孤独を持つ人間として重なりあう部分がこの2人を引きつけたのかもしれません。


大スクリーンで見れて喜びいっぱい