Xionglongshu

ラストエンペラーのXionglongshuのネタバレレビュー・内容・結末

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

まずこんな壮大な映画を撮ろうとしたベルトルッチ監督の挑戦に感動する。そして中国共産党協力のもとで紫禁城を数週間貸切で撮影、という、もうそれだけで出来事として歴史に残るべきものなんだけど、それがしっかり面白いし、美しい。

特に溥儀の幼少期、青年期の紫禁城内での暮らしの色彩、中国建築のスケール感がとても素晴らしかった。
中国庭園を囲む宮廷の人々のシーン。話は聞こえないけど池の向こうに見える、みたいな付かず離れずの距離感をみて、もしかしたらこれが東洋的な空間感覚なのかもしれないと感じた。でも何か圧倒的に人工的。それが中国か。
あと布を効果的に使ってるシーンが、二箇所ぐらいあって、好きだった。あれは溥儀が外部の人間と、身体的な感覚で触れ合い、自己を確認する、という幼少期から喪失していた経験の回復という意味だったのかな。
溥儀は3歳から死ぬまで、歴史に翻弄されつづけ、立場がコロコロ代わって、ずっと他人の意思によって生かされていた存在。完全なる自由だと思っていた幼少期の生活は、実は城外にも出られない完全なる不自由の世界だった。彼の周りで勝手に世界は変わっていく。その寂しさがいつも漂っていた。

内容は創作も多いようだけど、ざっと中国やその周辺の歴史を概観できる。日本人は相当悪者として描かれている(実際そうだったんだろう)。

やっぱり最後のシーン、かつて自分の座っていた椅子を、観光客として見る(幻想のようだけど)、あのシーンはもう、この変化が一人の男の一生のうちに本当に起こったんだという感慨が、たまらない。

映画の価値を久々にズドーンと感じられた体験でした。
Xionglongshu

Xionglongshu