マクガフィン

ウルフ・オブ・ウォールストリートのマクガフィンのレビュー・感想・評価

4.1
巨万の富を築いた実在の株式ブローカーの栄光と転落の半生を描く物語。

志を抱き、情熱を燃やして、達者な口と並外れた行動力で成り上がり、金とセックスとドラッグにまみれて、仲間を売った実在の男の栄枯盛衰を、乱痴気騒ぎにブラックユーモアを交えたスタイリッシュな映像と話法な構成は、スコセッシならではのエネルギッシュで痛快に。ウォール街の強欲的な資本主義の本性を基にして、アメリカンドリームの成れの果てとその荒唐無稽で不遜な夢や実現を炙り出す。

仲間や社員を鼓舞し熱狂させ、狂ったエネルギーがどんどん相乗する展開は、徹底的に醜悪で、偽善者的な厭らしさがないせいか清々しい印象が不思議に。人間(男)の奥深くにある欲望や本能を描ているからか。

次第に狂気の渦に飲み込まれていく堕ちて行く模様は獣のようで、ブラックユーモアだから滑稽なのではなく、人間の性や多面性を炙り出すことが滑稽で抜群に面白い。

引き返すことができる、運命の分岐点を描写したシーンと終盤のシーンは秀逸で、終盤の一代で成り上がった男の成功と破滅と再生を見つめる社会的弱者の願望と欲望の対比を描いた人間の真理がウォール街を象徴するようで考え深い。