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恋するリベラーチェのGreenTのレビュー・感想・評価

恋するリベラーチェ(2013年製作の映画)
3.5
ゲイバーでナンパされる70sの髪型のマット・デーモンですでに引き込まれました!

冗談はさておき、パケ写で安っぽそうなラブコメ映画にミスリーディングされてますが、美術が案外良くってついつい観てしまったし、ド派手なベガス系ピアニストを演じるマイケル・ダグラスがすごくってビックリしました。

全身ライムストーンのタキシードを着て、ライトが当たると「オーラが出てる!」ってくらいピッカピカに光っていて、ピアノも金ピカで爆笑していたのですが、マイケル・ダグラスの、いかにもゲイな、おばさんのような柔らかい笑顔とか、身のこなしがもう「こんな役できるの?!」と、とにかく感心しまくり。

で、ピアノがすっごい上手くて、片手で弾きながら喋ったり、こんな悪趣味な金ピカのショーを「なんだか楽しそう!」って思わせるところがすごい。

「ピアノあんな風に弾けるように見せるために、一応練習したんだな」とマイケル・ダグラス、ここでもすげーなと思っていたら、あれは弾ける人の身体にマイケル・ダグラスの頭をCG でくっつけたんだって!すごいCG。全然解らなかった。

マット・デーモンがこの人と出逢い、若いツバメになっていくところでだんだん「あ、これ自伝映画だな」と気がついたのですが、このリベラーチェって人、全然知らないよ。

背景は1970年代後半から1985年くらいまでで、リベラーチェの最後の10年間くらいを描いているらしく、絶好調に人気があったのは60年代らしい。

注目すべきはリベラーチェとスコット(マット・デーモン)のゲイ関係で、いや〜、マット・デーモンとマイケル・ダグラスのセックスシーンが観れるとは思わなかった。これって2013年?結構みんな頑張ってゲイの役に体当たりしていたんだなあ。

ちなみにこの映画、スティーブン・ソダーバーグ監督で主演もA級スターなのに、聞いたことないな!って思ったら、ハリウッドは「ゲイ過ぎる」と言って、どこの配給会社も拾わなかったらしい。そんでHBOでストレートにテレビ配信になったそう。ソダーバーグ監督は「ブロークバックが2005年に出たのに、遅れてる!」と文句を言ってたらしいが、私もハリウッドの保守的なところに驚いた。ヨーロッパでは劇場公開されたらしいもん。

あと、整形手術をするシーンが出てきてすっごい衝撃!マット・デーモンの顔にメスを入れるシーンがあて、すっごい気持ち悪い!

リベラーチェは年配になってきたので若返りたいと整形するのだが、スコットも「自分と似せたいから」と整形を強要する。すごくない?!エンタメ界って狂ってるなって思った。

リベラーチェを整形する医者を演じるのがロブ・ロウなんだけど、自分も整形しているらしく、変な顔なのが面白い。これって、テープを張ってシワを伸ばしていて、この頃は本当にみんなこうしていたらしい。

で、整形手術後の痛みを紛らわすための痛み止めとか、痩せるための薬とかガンガン常用して、中毒になっていくのも平気。「カリフォルニア・ダイエット」って名前が付いているのに、ダイエットじゃなくて単に痩せる薬を飲むだけ!

それとか、リベラーチェは整形手術で目が閉じなくなっちゃう。怖い!!

あと、ゲイであることをひた隠しにする。こういう時代だなあ〜と思った。リベラーチェのド派手で悪趣味な衣装を観ていて、エルトン・ジョンとフレディ・マーキューリーを思い出した。やっぱりゲイの人ってああいう感じ、ってひとくくりにしてもいいんじゃないか、って思うくらい似てる。エルトンもフレディも、ゲイであることはみんな知ってたけど一応そうじゃないってことになってたじゃない?結構、1980年代後半くらいまで、「本音と建前」みたいのってあったよね。

話が後半になってくると、リベラーチェがショーのダンサーの若い男の子に色目を使い始め、スコットと喧嘩が絶えなくなってくる。ここを観ていると、どうもリベラーチェはこうして常に若いツバメをとっかえひっかえしていたようだ。オープニングでスコットをナンパするボブも、実はリベラーチェに若い男を紹介する仕事だったんじゃないかと思わせる。

これは、なんかエンタメ界の闇んだなあ〜と思った。リベラーチェは有名になるほどに孤独になり、スコットとは本当に恋愛したんだって感じに描かれているけど、アシスタントとして雇ったり、生活の面倒を見て上げたり、上下関係にしてしまったら本当の人間関係なんて築けないと思う。スコットを取り込んで行くところも、「朝までにはちゃんと家にかえすよ」とか言いながら朝まで泊まらせたり、あれは愛ではない。

リベラーチェは本当の愛なんか求めていない、自分の自由になるペットが欲しかっただけなんだなあと思うし、エンタメ界ってやっぱそういう、名声とか権力を求める自己愛だけが強い人たちの世界なんだなあと思わされる。

有名人の自伝映画って大体同じ構成になってしまうから「良くある自伝映画」って思う人もいるかと思うけど、色々考えさせられる、エンタメ界の裏側に切り込んでいると思うし、CGI とか、整形のシーンとか、リベラーチェのすっごい派手な衣装やステージセット、きっちり作り込んであってクオリティ高いし、マイケル・ダグラスの演技なんて主演男優賞行けるよ!オスカーって自伝大作好きなくせに。『ジュディ』が主演女優賞獲るのに、この映画は劇場公開さえされないなんて。ハリウッドってやっぱり閉鎖的なんだなあと思う。
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