ケーティー

ジャッジ!のケーティーのレビュー・感想・評価

ジャッジ!(2013年製作の映画)
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大好きな作品


大学生の4年間で、おそらく唯一映画館で観た映画。当時めちゃくちゃ面白かった記憶がある一方で、一緒に観た人はいまいちと言っており、今観たらどうだろうと、恐る恐る観始めた。

だが、結論から言うと、やっぱり面白くて大好きな映画だ。三幕構成や(ともすれば、受け身or反応的な行動ばかりになりかねない)ダメダメな主人公をポイントポイントでうまく主体的に動かす所をつくっているなど、構成や伏線もしっかりしている。またギャグは、改めて観ると当時ほどの新鮮さや衝撃はないが、やはり(そこそこ)面白い。

ただ欠点を挙げるなら、台詞が映画の演出も相まってテンポがよいのだが、ひっかかりのあるセリフがない。例えば、三谷幸喜さんや宮藤官九郎さんはこのあたりが秀逸で、テンポのよいギャグ満載のコメディなのに、その人物特有のひっかかりのある(いい意味で違和感があって印象に残る)セリフをぶちこんでくる。しかし、本作はそういうものがないから、さらっとしている。そのさらっとした味わいが魅力であり、よさでもあるのだが、ひっかかりのあるセリフがないがゆえに、歴史に残る作品になりきれなかったのだろう。しかし、一般的な評価を考えて客観的に観ればそうなのだが、それでも私が好きな作品であることに変わりはない。

また、ひっかかりや作家性を感じさせるセリフはないものの、ドラマ上で効果的なポイントを抑えたセリフ(※)はある。

キャスティングも全体的にいい。主演二人も悪くないが、豊川悦司さんのうさんくささや荒川良々さんの手堅い面白さはやはりいいし、なんといっても鈴木京香さんが色んな意味ではまっている。(この役を観ると、改めて「記憶にございません!」の総理婦人が鈴木京香さんだったら面白かっただろうなと思った)

さて、本作は選考会で自分のCMを選ばせるためにみんなが画策する話だが、思えば最近の永井監督のヒット作「帝一の國」も根本の構造は似たところがあったから、うまくいったのではないか。まだ観たことないので、そちらも観てみたいと思った。

最後に余談だが、初めて観たとき、北川景子さんがすごいいいなと思ったが、一緒に観た人は演技が下手だと言っていた。改めて観ると、たしかに下手だ。しかし、役には合ってるし、演技そのものは下手でも、彼女を魅力的にみせる仕掛け(演出)が色んなところにある。ただ、今回改めて観て一番思ったことは、北川景子さん演じる大田ひかりという役が、(こんな人現実にはいないけど、)世間の理想の女性像の1つであるということだ。気が強くて、きついことも言う。けど、どこか献身的だったり、優しさや人情がある。彼女がパリッとした服装で、浅草の場外馬券場近くの居酒屋で1人自然に飲んでるところなど最高だ。ただ、女性から観たら、この役はどう映るのだろう。それも気になった。


(※)印象的だったセリフ
・「今日ダメだからってね、エラそうにするな」
→ダメダメな主人公だからこそできるエリートへの説教。主人公を主体的にうまく動かしている。これに対する相手の返しもいい。
・「人はみんな嘘つき、みんな正直よ……だけど、人助けになる嘘の何がいけないの」
→作品のテーマを投げかける。「マクベス」の魔女たちのセリフ「きれいは汚い、汚いはきれい」も思い出させる。
・「(途中から)こんなに世界を動かしてる。何よりも影響を受けたのは俺だ」
・(ラストのセリフ)
→ネタバレになるため割愛。このセリフは初めて観たときからずっと印象に残っていた。こういうオチもあるのか、いいなと当時すごく衝撃を受けたし、改めて観てもいい。