みかんぼうや

ぼくたちの家族のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

ぼくたちの家族(2013年製作の映画)
3.8
【妻夫木兄と池松弟のデコボココンビが素敵。暗く辛いテーマではあるが、そこに光る監督の温かい視点】

池松壮亮よ、そのキャラと演技はズルいわ~、泣いちゃうよ!
主演の妻夫木聡と池松壮亮の男2人兄弟がなんとも良い!真面目で責任感が強いが中学時代に引きこもり経験のある社会人の兄(妻夫木)とチャランポランで何も考えず適当に生活しているようでいて実は家族思いな弟(池松)のデコボココンビ。

この2人と一見亭主関白そうで実は妻と子どもに頼りっぱなしな人間味溢れる父親が、突如脳腫瘍で余命数日と診断された母のために奔走するいわゆる分かりやすい家族病気物。おまけに家族は経済的にも非常に厳しい状況に置かれているという追い打ちつき。

しかし、危機的状況で終始物凄く暗い話になりかねない中、ストレスもMAXなはずで一番辛い立場に立たされる兄妻夫木は、かつての引きこもり経験の弱さを振り切るかのごとく、今自分ができることに奮起し、最初は真剣みが足りなかった弟も引っ張られ、“決して希望を捨てない”と前向きに動き出す。

このあたりは監督石井裕也の価値観ゆえのこの作風なのだろうか。同監督の「舟を編む」でも感じた、「どんなに大変な時でも、根気よく諦めず前向きに動き続ければ、いつかは必ず報われる」というポジティブな思想を感じる。

10代の頃のハッピーエンド好きから一転、20代の頃は、衝撃的なバッドエンドや残酷で世知辛い結末に“リアリティ”を感じ、そういった作品をとにかく好んだ時期があった。今考えると、バッドエンドや陰鬱とした暗い作品が好きであることで、なんとなく“通である”と勝手に酔いしれていたのかもしれない。

しかし、40代に入り、本作のような分かりやすい希望が見える作品がまた素敵だな、と思えるようになった(30代はほとんど映画を観ていなかったです)。

人生経験やその時の価値観で映画の見方や評価って本当に変わるな、なんて本作を観終わったときにふと思いつつ、最後は温かい空気に包まれたのでした。
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