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フィルスのRのネタバレレビュー・内容・結末

フィルス(2013年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

自宅で友人1人と。

2013年のコメディ映画。

監督はジョン・S・ベアード。

話は年末のクリスマスシーズンに発生した日本人留学生殺人事件をきっかけに出世を目論むコカイン中毒の刑事ブルース・ロバートソン(ジェームズ・マカヴォイ「アトミック・ブロンド」)は同じ出世レースに参加する同僚を貶めようと画策するが、その行為は次第にエスカレートしていくというもの。

予告でのインパクトに惹かれて、気になっていたところをツタヤの旧作三本無料キャンペーンをきっかけにツタヤで発見したので、借りて観ました。


やはりというかなんというか、予告観てわかってたけど、ジェームズ・マカヴォイ演じるブルースの圧倒的「フィルス=クズ」感か凄まじい。

ジャンルとしてはコメディなので、もうちょいポップなクズを想像してたんだけど、子どもの風船を飛ばしてダブルファッ○ポーズをとるのは可愛いもので、自分がのし上がるために同僚を蹴落とすわ、裏工作するわ、慕っている友人の公認会計士のブレイズ(エディ・マーサン「アトミック・ブロンド」)や同僚のドギー(ブライアン・マッカーディー)の奥さんとも寝ちゃうしで止まることを知らない。

しかも、それをプロフェッサーなど割と紳士なイメージのあるマカヴォイが悪そうな顔で憎々しげに演じているので、余計やばいキャラに見える。

けど、そんなブルースの「フィルス」な部分は生来からのものではなくて、過去に最愛の奥さんのキャロル(ショーナ・マクドナルド)と娘が他の男のところに行ってしまうという辛い過去があり、人格が崩壊してしまったことが徐々に分かると、そのエスカレートする刹那的なクズ行為も切なさが垣間見える。

特に後半、下に見ていた同僚のアマンダ(イモージェン・プーツ「スウィート・ヘル」)との言い争いの際に追い込まれて、瞬間的な本音の弱い部分を見せるシーンでは、やはり演技派のマカヴォイ。魅せてくれる…。

また、奥さんと娘さんにオーバラップした未亡人のメアリー(ジョアンヌ・フロガット)とその子どもとの会話シーンでは、割と普通に対応していることからも、あぁこの人は生来のクズではないんだなぁと感じられた。

まぁ、同情できる部分はそれでも微かにあるものの、それにしたってあまりにもやることなすことむちゃくちゃな非人道的な行為&後半に明らかになる破滅的挙行によって、いよいよ追いやられたブルースは自殺を決意するわけなんだけど、普通の映画なら上述のメアリー親子といい感じになって終わってもいいはずなんだけど、今作はそうならない。

早く…早く…!!と思いつつ、多分あともう少しでも生きる気力があればどうにかなるはずだったのにも関わらず

去ってしまうメアリー親子の後で

「俺のルールに例外なし」、そう画面越しの我々に台詞を吐き、彼は逝ってしまう。

なんだろう、この抉られた感じは、結局最後の最後は観客の心をえぐるというフィルスなまま旅立ったブルースが堪らなく悲しいし、心に残る。

ずっと体感的に連想する「トレイン・スポッティング」の系譜を受け継ぐ、エモーショナルなイギリス産悲喜劇だと感じた。

ラストシーン一つとっても忘れられない一作でした。
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