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ゆるせない、逢いたいのmamaoのレビュー・感想・評価

ゆるせない、逢いたい(2013年製作の映画)
4.8
まずこれがデートレイプと呼ばれる事例だと初めて知った。
好きな人、親しい知人に無理矢理って経験はないが、何よりも母親が自分の母親と似過ぎていた事で沢山共感出来る物語だった。

一人娘、または長女に対する母親の異常な程の子離れしない感じ…愛してる大事に育てて来たつもりかも知れないが、過保護や過干渉では済まされない、ただの母親の自己愛でしかない。
躾は厳しくして来たとしても、せめて思春期ともなれば、恋をする娘を温かい目で見守り、好きな人が出来たんだと娘の口から母親に打ち明けてくれる様な母娘関係を築いてあげないといけない。

芽生えた小さな恋を大切にしたいがあまり、厳格な母に壊されてしまう事を恐れて嘘を着いたり、思い出の詰まった携帯を自ら真っ二つに割った少女の気持ちが痛いほど解る。
私の場合は門限は勿論、風呂の度に携帯をチェックされ、発着信履歴が毎月書面で郵送され、この番号は誰なのかと問いただされるレベルだったから、非通知でかけてもらったりワン切りにしてもらったり母親に精索されない工夫していたのを思い出した笑

少年が孤児だと打ち明けた別れ際、少女は何も言わず胸に抱き寄せ母性で包んだ。
その帰宅後に母親に携帯を見せろと言われ、結果唯一の連絡手段を自らの手で壊し連絡が途絶えた。
少年からしてみれば、孤児だと打ち明けた瞬間から連絡が途絶えた訳で、嫌われたと思い込み仕事でも少女の家の近くを避けていた。
一方少女は偶然会える事を信じて公園のグランドで待つ日々。

夜道待ち伏せた少年がやっと会えた時、少女は母親と一緒だった為、母親に気づかれない様に素通りして一旦家に入るが少女は飛び出し少年を探した。公園のグランドで再会出来たものの、話をする前に少年は少女に身体で募った思いをぶつけてしまった。

相思相愛の二人だったが、少女は行為自体に抵抗して嫌がった上の処女喪失だった為、娘の話を聞く事もせず母親の独断での通報と被害届によりデートレイプとして扱われてしまった。

少年は必ず少女を送り届け、走る少女を応援してグランドをナイターで貸し切ったり、段ボールを見てほっとけないと言ったり、古本で売れば100円になるよ。とか…柳楽くんの表情も上手すぎるけど悪を感じない本当に純粋な少年だった。

なのに何故レイプしたのか…

私には理解できてしまった。

少年は孤児。両親に捨てられた事から始まる人生を歩んで来た。それを知った少女は涙ぐむ少年を母性で包み込んだにも関わらず、音信不通からの無視…
少年からすると突き放された感覚を持ってしまっても仕方ない。
好きだからやってしまった!
そう対話で言った気持ちは真実だと思う。

少年の未熟だった部分は一つだけ。
乱暴に処女喪失させた事ではない。
再会した瞬間に少女の口から話す【言い訳】を聞かなかった事。
抱きしめて解散した直後に携帯を割る事になった事と公園で待っていた事。
それを聞いて納得しない少年ではなかった筈だ。

硬派に育てられた少女からすると母親に洗脳されてる反面、男に乱暴された、好きなら何であんなやり方…って思ってしまうのでしょうね。

母親に家庭内暴力を受け続けても屈さず、洗脳されずにひたすら反発して対立し続けて17で実家を出た私なら
余裕で【許せる。】
むしろ其れ程の思いを自分勝手な行為でも痛かったとしても受け止める。だからレイプと思わない。なんなら到底理解出来ない母親を捨てて駆け落ち。

結果若くて純粋でしかなかった二人を、ゆっくりゆっくり大切に進んでた恋を、好きだとお互いに伝える前にすれ違わせて引き裂き、こんな思いをさせたのは、少女の母親でしかない。娘の過去も未来も台無し?!にしたのはあんたですから!

子供は親から見ればいつまでも子供かも知れないが、自分の分身でも無ければ鏡でもない。自分の思い通りにいく訳もない。自分の理想を押し付けてはいけない。特に思春期の恋に関してだけは一番尊重して素直で純粋な人を好きになる気持ちを親の手で潰してはならない。

柳楽くんの演技力に持って行かれたのも有るが、ラストは涙が止めどなく溢れて枕がびしょ濡れになった。

携帯さえ割らずに済んだら(=こんな母親でなければ)この恋は実った。

自分の子供には絶対にこんな思いをさせたくない。
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