ひでやん

パッションのひでやんのレビュー・感想・評価

パッション(2012年製作の映画)
3.8
ヒッチコックの模倣だとメディアに叩かれたデ・パルマだが、模倣からの脱却が裏目に出て失速したように思えていた。しかしデ・パルマ節が炸裂する今作は「待ってました!お帰りなさい」という出来映えで満足。

大手広告会社の重役と部下である2人の女性を主役に、虚実を巧みに織り交ぜながらスリリングなサスペンスへと展開。

互いに信頼し合い、良きパートナーである2人の笑顔から始まり、徐々に表面化する嘘と裏切り。やられたらやり返すドロドロした戦いが激化し、どちらの視点で観てもどちらも憎ったらしい。

レイチェル・マクアダムスの野心的で狡猾な悪女っぷり、ノオミ・ラパスの精神が崩れていく憔悴っぷりは見応えあり。

前半はいがみ合い、画面分割から一気に加速する後半のサスペンスは最高。左から現れたバレエの映像がクリスティーンを押し出しながらスライドし、2分割で停止。やがて全画面をバレエが支配し、右から再びクリスティーン。寄せては返すスプリットに思わず笑った。

デ・パルマの持ち味である長回しや一人称視点は健在で、随所に初期作品を彷彿させる演出があった。巧みなミスリードに騙されて気持ち良かったが、ラストはスッキリしない。
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